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耳がいたい

耳がいたい。
別に耳がいたくなるようなことを誰かに言われたわけではない。

物理的に痛い。
中耳炎や外耳炎ではなく、耳たぶが痛い。
正確にいうと耳たぶに開けてあるピアスホールのなかの1つがめちゃくちゃ痛いのだ。

過去にピアスを4回あけた。
最初の2回は友人と夫に1回ずつ開けてもらった。大学生の頃の話だ。

その時は左右1つずつあけたのだが、なぜか知らないけど左のホールは半年くらいで塞がってしまった。
右も塞がりかかっていたが、たまにピアスをつけるときに薄皮を無理やり貫通させて維持させていた。

それから、またホールを開けようと思ったのは昨年の秋ごろだった。

なんだが毎日がつまらなく感じていた時期だった。
なにかで、ピアスホールを開けると「穴を開ける」=「運気を開く」という意味があると聞いて、すぐにピアッサーを2つ購入したのだ。
両耳に1つずつ自分で開けた。自分の手で運気を開きたいと思ったから。

少し前のnoteで「目に見えないものはあまり信じない主義」的なことを書いた気がするのだが、大嘘だった。目に見えないことに運を委ねすぎである。

かくしてわたしの右耳には2箇所、左耳は1つ閉じていたので1箇所の穴が開いた。

このアンバランスさが私はとても気に入っていて、ファーストピアスを外したあとは、常につけっぱなしできるループピアスを入れ続けていた。
特に右耳のピアスの並びはお気に入りで、2つ並んだピアスを鏡で見るたび嬉しかった。

2週間ほど前にピアスを付け替えて、それはお守り的な意味合いで大事にしようと思っていた。

そんなわたしの右耳のピアスホールのうちの1つが、昨日突然腫れ上がったのだ。
原因はわからないのだが、昼過ぎくらいに「触るとちょっと痛いな」と感じたところからどんどん痛みが増してゆき、夜には何もしなくても耳が痛いという状況になってしまった。
鏡で見ると、右耳の下半分が真っ赤に腫れ上がっている。

もうどうしようもないためピアスを外したところ、徐々に痛みはおさまり、腫れも少し引いてきた。

一夜あけた今日、痛みはすっかり治ったので昨日外したピアスをもう一度つけようとしたときに、事件は起きた。

ピアスが入らないのだ。

そこに穴があることはわかるのだが、ピアスの先がどうしても入らない。

何年か前に「夫のちんぽが入らない」というノンフィクション小説が話題になったのだが、そのセックスシーンばりに入らない。
こんな表現をするとコンプライアンス的にあれなのかもしれないが、わたしはあの小説が好きだ。
作者へのリスペクトの意味も込めて使わせてもらう。
耳にピアスが入らない。

確かに穴はあるはずなのだ。だってこの手で開けたから。
それなのに入らない。ファーストピアスよりうんと細いピアスの針が刺さらない。

無理やり入れようと押し込むと、穴から流血してしまった。
タラタラと血が流れ、それでもピアスの針は先っぽしか入らない。
そしてまたジンジンと痛くなってきた。

こんなところまで小説とおなじである。

悲しい。大切にしていた右耳のピアスホールの1つが埋まってしまった。
もう右耳たぶにピアスを開けるスペースはない。

ちょっと、いや結構落ち込んだ。

でも仕方ない。昔からピアスホールは安定しない方だった。
わたしはよく食べよく眠る人間だから、治癒力が高いのだ。だから穴が治癒されてしまったのだ。
うちなる力である。ぐすん。


例えば、お守りが壊れたとき、それはお守りが持ち主の身代わりとなって受け止めてくれたのだとも言われる。

願掛けのように開けたピアスホールが突然閉じてしまったということは、ピアスホールが身代わりとなり、何か悪いものをシャットアウトしたのだとも考えられるだろうか。

うん、それがいい。そう考えるようにしよう。

つくづく私は、目に見えないものばかりを信じている。


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