見出し画像

【together】ショートショート #うたスト #課題曲B/PJ

その時 風が吹いて
私はあなたを見つけた

目を覚ますと真っ白な天井が目に入った。
「先生!目を覚ましたようです!」と声がする方向へ目をやると、ショートヘアの若い女性がドアの前に立っていた。

俺は一体何が起きたのか全く理解できずにいたが、病室ということは理解できた。
どこか怪我をしているのか?
両手をながめて、足を曲げて、腕を動かしてみるが、痛いところはない。

「目を覚ましましたね。」ドクターらしき人が言った。
「あの〜俺は一体?」
「どうやら道で倒れたらしいんですよ。彼女が直ぐに救急車を呼んで、この病院に運ばれてきたというわけです。
調べましたが気になるところはありませんでした。なので少し休んだら帰って大丈夫ですよ。あなたの私物はカゴの中にありますから。それではお大事に。」
「あ、ありがとうございました…ところであなたは?」
「名乗るほどの者ではございませんが…アカリ、27才、独身!」
そう言って、病室いっぱいに響き渡るように笑って締めくくった。
「俺は、ノボル、25才、求職中!」彼女につられて大声で自己紹介をしてしまった。
その後二人同時に意味もなく笑った。
「ね、ノボル。あなたは私が必要になる時が来るわ。携帯番号教えておくね。」
そう言ってお互いに電話番号を交換した。

就職活動はなかなか苦戦していた。
誰にも迷惑をかけずに早く自立したいと意気込んで一人暮らしを始めたけど、料理といえば目玉焼き程度で、週1の洗濯と掃除でもかなりだるい。
今になって、母さんの偉大さを感じてる。

メールの着信音が鳴った。
先週受けた会社からだ。
またしても不採用通知…。
これで15社目だ。
そういえば、倒れた日も不採用通知を受け取ってたんだ。
まさかそれで倒れた!?そんなやわな男じゃ無いはずだ。
それにしても落ち続けると精神的にはよろしくない。
その日は、応募する企業を探すのを止めて、はやばやとベッドに入った。

翌朝、体調が悪くて目が覚めた。
多分発熱しているんだろう。
余りのだるさに不安になった。
一人暮らしってこうゆう時しんどい。
殺風景な天井を見ていると、学生の頃の自分が見えてきた。
楽しかったな~。金が無くても笑ってた。
皆でカラオケ行って、音痴な俺を皆面白がって真似して。確かに外しまくってたな~。
そんな事を思出していると、冷たいものが流れてきた。
俺、泣いてる……!?
恥ずかしいけど声を出して泣いていた。
何だ俺、しんどいな……。
そして、気がつけば彼女に電話をしていた。

「はい、はーい!こちらアカリ。そちらノボルさんですね~お待ちしておりました!」と元気な声が聞こえてきた。
俺は恥ずかしげもなく泣いた。

「ノボル。今会いに行くよ〜!
ねえ、窓を開けて!」
言われるまま窓を開けたら心地よい風が入ってきた。
それと同時に背後に人の気配がして振り向くと、アカリが立っていた。
僕は嬉しさでアカリを抱きしめた。

再び優しい風が吹いて、俺たちは風に巻かれるようにキスを何度もした。

大丈夫 大丈夫
私があなたを救うから
あなたは優しい笑顔で私を抱きしめてtogether with smile

《おしまい》


PJさんの企画に参加!
始まったばかりだよー👍
3/14までやってるよー!

今回挑戦したのは、『Inorganic Passion/PJ』
やっぱりへっぽこだったー!😂
PJさん、素敵な歌をありがとう❤️
詳しい記事はこちら👇

#うたスト  #課題曲B
#ショートショート  #掌小説 #小説 
#音楽

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️