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『リオと、サンタの椅子』短編

私の名前はリオ。
勉強嫌いの読書好き。
特技はアヒルと話すこと。
大人になったらインディアンになる事を夢見ている12歳。
そして私にはパパがいない。
いや、正確にいうと、他国でスパイみたいな事をして、私が5歳の時に逮捕されたのだとか。
ママはそれでもパパが大好きらしく、毎日写真にキスをしている。

日曜日は必ずママと二人で家中掃除をする。
ある日リビングの隅に赤い立派な椅子があることに気づいた。
「ママ、この椅子は?」
「サンタさんの椅子」
「サンタなんていない事、もう子供じゃないから知ってるけど」
「充分まだ子供だから信じてなさい。」と言いながらウィンクをした。
理解不能な親である。

クリスマスが近づくにつれてママの様子がおかしくなった。
所謂、浮かれているのだ。
こんなママは見た事がない。
身体中にクリスマスの電飾をグルグル巻きにしているかと思うくらいのはしゃぎっぷりだ。
気にしないふりをして、愛読書「それでもあなたの道を行け―インディアンが語るナチュラル・ウィズダム」をモンブランアイスを食べながらペラペラめくっていた。

クリスマスイブの夜。
テーブルの上には、七面鳥やスタッフィング、シュトーレン、ミンスパイが並んだ。
ママがちまなこになって料理するのは、この日か私の誕生日くらいだ。
一通り食べた後、ツリーの下にプレゼントを探しに行った。
毎年置いてあるはずなのに何もない。
「ママ、プレゼントは?」
と聞いても、ニヤニヤするだけで答えてくれない。
聞き返すのも面倒だから、ソファに座ってテレビのチャンネルをつけた。
「リオにとって最高の夜になるわよ」と耳元でママが囁いた。
なぜ囁く!?と思ったけれど子供らしく「わーい!」とだけ言っておいた。

夜、23時を回ったころ突然電気が消えた。
「停電!?」そう言いながら二人でベランダに出た。
空は星で埋め尽くされていた。
あの隙間をうまくサンタはソリを走らせてくるのかと思うと、なかなかの腕前だと思った。
ふと周りの家を見ると、電気がついていた。
「ママ、他の家は電気ついてるよ」
「あら、ほんとね!?」
取り敢えず寒いから家の中に入ったら、途端に灯りがついた。
「メリークリスマス!!」
あの赤い椅子にサンタが座っていた!
そのサンタにママは抱きついたり泣いたり笑ったりキスしたり忙しい。
「リオ、大きくなったな!お前のパパだよ!」とタオルを絞るように抱きしめた。
「くくく…」
「えっ?クリスマス!?」
「クルシイーーーー」に決まってるだろ!
と言いたくなったけど本当に苦しくてそれ以上言えなかった。

そしてパパに会えた嬉しさのあまり、思わず叫んだ。
「パパ、リオにもキスして!」

✴︎✴︎✴︎

クリスマスにちなんだ詩を書こうかと思ったら、急に頭の中に女の子と赤い椅子が出てきたので、急遽!?短編にしました!
いやーお恥ずかしい🤭
真剣に読むと粗が出るので、片目で読んでくださいね。
あっ、ここまできたらもう読んでましたね🤭

★百瀬さんのこの企画に初参加ヽ(^o^)
1日に担当させて頂き、とても光栄です!

#2022クリスマスアドベントカレンダーをつくろう
#短編 #小説
#ショートショート

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️