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【白い帽子を探す黒猫のクロ】物語

「お母さん、猫飼ってよ〜」
そう言ってキッペイはペットショップのウィンドウから離れる気配がない。
今日はかなり粘って、鼻先がぺしゃんこになるくらい顔を窓にくっつけてガン見している。
可哀相に、子猫が怯えた目をしてこちらを見ている。
「キッペイ、そろそろ帰るわよ〜!」そう言っても全くビクともしない。 
「本当にダメ?この仔猫が一緒に帰りたいって言ってるよ〜。」
「キッペイ、生き物を育てるのは、いい加減な気持ちじゃダメなの。そんなの分かってるよね!?」
「…もう、3年生だよ。
学校でウサギの飼育してるの僕だよ。
毎日声かけてご飯もあげて、お腹壊してないかウンチの色も確認してるんだから。」
そうボソボソと仔猫を見ながら返答するキッペイを見ていたら本気なんだと分かった。
「キッペイ、じゃ帰ってお父さんに相談ね。」

結局、翌日仔猫を飼う事になった。
名前はキッペイが、黒いからという単純な理由でクロとつけた。
それから毎日キッペイは、自分の弟が出来たと喜んで遊んだりご飯をあげたりと、思っていた以上に世話をしている姿を見て、いつの間にか成長したキッペイの姿に感動さえしていた。

キッペイが学校に行ってる間、クロはキッペイが気に入っている白い帽子の中でゴロゴロしていることが多かった。きっとキッペイのにおいがついているから安心するのだろう。

そんなある日、キッペイが遊んでる時にお気に入りの白い帽子を公園のどこかに忘れて来たと言うのだ。
もう小さくもなってきただろうから、新しいのを買ってあげるからということで話しは終わった。

その翌日、クロがやたら落ち着きが無かったが、余り気にすることもなく、キッペイを学校に送りがてら、久しぶりに図書館へ行って近くのビーフシチューが美味しい洋食屋さんでランチをして帰った。

「クロ〜ただいま〜!」
いつもならミャーミャーと玄関まで来てくれるのに、今日は来てくれない。
名前を何度呼んでも出てこない。
不安になって家中を探したけれどどこにもいない。
ふと、朝空気を入れ変えようと居間の窓をすこしだけ開けておいたのだが、閉めるのを忘れていたことに気づいた。
ということは…心拍数が急激に上がったせいで、少しフラッとしたのでソファに腰掛けて、これからどうすべきか考えた。

家の周り、隣り近所、近くの路地裏、あらゆるところを探したけど見つからない。
なんて事をしてしまったのか、とめどなく涙が流れてきた。

その日、キッペイが帰宅してから、クロがいなくなった事を説明した。
キッペイは涙を必死に堪えながら、「ママ、大丈夫だよ。僕の弟はちゃんと帰ってくるから。」そう言って私を気遣ってくれた。

✴︎✴︎✴︎

「ボクの帽子はどこに行ったのかな〜」とクロはあの白い帽子を探していました。
草むらをかき分け、人の声に立ち止まり、車の姿に注意しながら、キッペイがいつも遊んでる公園にたどり着きました。
公園で遊んでいた子供達がクロに気づいて追いかけて来たので、クロは怖くなって草むらに逃げ込みました。
すると、懐かしいにおいがしてきたのです。
「これは!」そう、キッペイのあの白い帽子でした。
クロは、嬉しくなって早速その帽子の中に入りました。
「やっぱり安心するな〜」
そう思いながらウトウトしてしまいました。

その頃キッペイは、見つかるまで探す意気込みだったので、懐中電灯を持って公園に向かっていました。
「きっと、いつもあの白い帽子の中でゴロゴロしてたから、きっと探しにいったんだ。
ボクのせいで…ごめんね…ごめんね…」
と何度も何度も言いながらキッペイは公園の中を探しました。
とその時です。
白い物がゆっくりと動いているのが目に留まりました。
「あー!僕の帽子!」
そこにはキッペイの白い帽子の中でウトウトしていたクロが、キッペイの声に反応して、歩いていたのでした。

《おしまい》

💦ひゃー間に合いました😂
えぴさん、宜しくお願いします〜💕

#猫と帽子の創作 #ショートショート  
#掌小説 #小説   #物語 みたいなもの

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️