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ゴンドリエ・スナックからジェラートが消える日


東京ディズニーシーのゴンドリエ・スナックでジェラート販売が完全に消えてなくなることを知り、朝から生きる気力をなくしているゲストの一人です。イタリアがテーマの港でジェラートを売らないとか落胆しかない……テーマパークとは……

古き良きイタリアの景観の中で、春でも夏でも秋でも冬でもジェラートを食べるのが好きでした。あまりに悲しいのでオリエンタルランド宛てにお手紙を書こうと思っているところです。私一人の意見で覆らないのはわかっているし、ホットスナック用に機材搬入するのだろうから向こう数年はジェラートの再販はないと思うけど、でも悲しいので。悲しい人たち一緒にお手紙を出しましょう。

イタリアに移住した友人が「イタリア人は冬でもジェラートを食べる」と手紙を寄越したことがあったので、ジェラートは単なるイタリア名物なのではなく、イタリア人のソウルフードであるし、イタリアの食文化の一つであるし、ジェラートのないメディテレーニアンハーバーはイタリアをモチーフにした港ではなくただの港だということを運営会社にお伝えしていきたいと思います。イタリアに憧れを抱いたことのない人が発案したんだろうな。

はあ、無理。ちょろいおたくを自認して生きているおたくでもこればかりは無理。だいたい原価率を無理矢理押し下げて、ファミレスやコンビニにも劣る低クオリティの食事で値上げして、「利益が出ました」って、素人目に見てもそれ利益じゃないよね……。もしかして、新テーマランド・テーマポートの建設に投資しすぎて赤字なのかな、オリエンタルランド倒産でもするんです……? 大丈夫? 倒産するならこれ以上私の愛するテーマパークを改悪する前に早く潰れてくれ。心の平穏がほしい。


で、このようなことをSNSで発信すると、おたく以外はそんなことを気にしない、という意見を散見するわけだけど、私は、いずれの業種においてもそういう「ささいなこと」を気にするコア層は収益の基盤であるように思うし、ささいなことが全体を作るのだ、と感じる。マーケティングは専門外なので知らないけど。

TBS「マツコの知らない世界」やテレ朝「帰れま10」を見ていると、コア層は商品の下支えだなと思うし、定番商品は飽きられることもなく定番商品だ。おたくは偏愛するものだけど、あくまでも揺るぎない「いつもあるもの」があっていつでもそこに帰れる安心感があるから偏愛しているんじゃないかな、と思う。安定した土台のないところに愛は立つことができない。だからやっぱり「いつもあったものがなくなってしまう」というのは、変化の中のさみしさという程度に抑えきれない息苦しさを感じる。テーマパークから「テーマ」を象徴する顔の商品が消え失せる。これまでの文化がなくなるということだ。東京ディズニーリゾートはただの遊園地になりたいらしい。

たぶん、ウォルト・ディズニーの言いたかった「ディズニーランドは永遠に完成しない」は、パーク内を画一化することではないんじゃないか。

ああ、悲しみがあふれすぎて文章が支離滅裂になる。ジェラート。ハーバーを眺めながら食べるジェラートが大好きだったのに。


そこまで文句を言うなら行かなきゃいいんじゃないですか、という意見もSNSに散見されるわけだけど、消費者が商品や会社に不満を言って何が悪いのかと思うし、東京ディズニーリゾートの場合は国内に代替商品がないのだから、不満を言いつつも舞浜へ行くという選択肢しかないのだ。これがたとえば、単なるそのへんのジェラート屋からジェラートの提供がなくなりましたというのであれば、私だってよりよい製品を求めて新たなジェラート屋へ行く。だけど私は、ゴンドリエ・スナックでジェラートを買ってメディテレーニアンハーバーでジェラートを食べたいのである。絶品のジェラートを食べることが目的なのではなく、ジェラートを中心にできあがる「行為」や「感情」や「思い出」が目的なのだ。これはそもそも、オリエンタルランドが掲げる「感動の創造」であるはずなので、商品を買う目的として何ら間違っていないと思う。そこが損なわれて悲しいと言って何が悪い。

また、企業にもいろいろ事情があるのだと諭されることがあるけれど、特段の異常なクレーマーでもないかぎり、あるいは企業が企業の失態ではなく不条理な出来事に見舞われて窮地に立たされているというのでもないかぎり、消費者が企業状況を斟酌しなければならない理由はどこにあるんだろう。例えば、私だって何も、京都アニメーションのような、痛ましい事件に見舞われた企業の現状に不平不満を抱いたりはしない。彼らが改めてアニメーションを世に送り出すときに、それまでとを意地悪く比較したりはしないだろう。ではなく、至って普通に事業をやっている企業の商品について、消費者がネガティブな意見を述べてはならないというのは、一体どのような理屈なのか、皆目見当がつかない。ちなみに東京ディズニーリゾート及びオリエンタルランドに対してはこの論調がとかく激しいので心底解せない。

ジェラートがなくなった悲しみでこれまで堪えてきたものが一気に爆発してしまうな。悲しい。私は本当に悲しい。ジェラート。


仮想のイタリアでジェラートを食べるより、本場で楽しみなさいよってことなのかもしれないな……。イタリアかあ。私は、リアリティとファンタジーの入り交じるあの空間が好きなんだけどな。さみしい。


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