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#読書感想文

眠れない夜に開く本

【とほん読書ノート014】 『幸福論』で有名なヒルティ(1833-1909)が、眠れない夜の時間を自らの人生を見つめ直すために活用しようではないかと書いた本です。 哲学者であり国際法の大家でもあったヒルティですが、何よりもまず敬虔なキリスト教徒でした。聖書を頻繁に引用し、信仰心に基づいた幸福を追求するための内容ではありますが、自身の経験に裏打ちされた実践的な助言も満ち溢れています。 信仰心があるからこそ本当の幸福を得ることができるというヒルティの言葉は無神論者の私にとっ

どうしようもなく泣ける料理短編小説『彼女のこんだて帖』

くぅ~~~、泣ける泣ける。 料理にまつわる15の物語がおさめられた角田光代さんの『彼女のこんだて帖』を読んだ。夜にハイボールを飲みながら読んだら、こらえきれずこっそりと泣いた。お酒が入るとやばいぞ、これは。 失恋をした女性が自分を励ますためにラム肉を焼いたり、妻を亡くした男性が妻の手料理を思い出したくて料理教室に通ったり、どの話もじんわり切なく、あたたかく、どうしようもなく泣けてきてしまうのだ。 読んでいるあいだは自分がドライアイであることを忘れるくらい、目が潤みっぱな

千の顔をもつ英雄/ジョーゼフ・キャンベル

地球規模、地球単位での課題に取り組むことが喫緊のこととして求められる現在、ポストヒューマンあるいは非人間という、これまでとは異なるパラダイムで思考をすることが必要だという話を昨年からこのnoteでは繰り返してきた。 その際、従来の人間中心主義的思考を抜け出すためのきっかけとして、現代においては失われてしまった神話の思考を参照することはとても有意義なことだと、このジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』を読んであらためて思った。 人新世の世における、神話の可能性1940年