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空の花篭、

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ネガティブ日記2019
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2019年8月の記事一覧

全部が嘘なのかもしれないと思うとき

 ――私がnoteに書いていることのどこからどこまでが真実で、どこからどこまでが嘘なのだろう?  時折、そんなふうに疑心暗鬼になる。自分で自分について書いているだけなのに、どうにも自信が持てなくなる。虚栄心と劣等感と自尊心が同時に息をして、いずれの言葉が私の素直で、本音なのか、私は私を見失う。全ての記憶と思考は私の虚飾で、妄想で、ここには何一つ真実はないのではないか。そうして、本当は、「私」などという存在は、生きてはいないのではないかという恐怖を思い出す。  魂の実在につ

夏の思い出'19

 最後の審判を下す存在でもないかぎり、善人か、悪人か、という両極に振り分ける問いの答えを考える意味はあまりないと思うけど、まあ、私は「いい人」ではないよな、と時々独りごちる。――少し前の私は、みんなに好かれるような人になりたかった。みんなに好かれているっていいなと思っていた。「みんな」って誰のことなのか、知らないけど。でもさみしかったから。私はとてもさみしい人間だったから、誰かは知らない「みんな」に好かれているという光景が、瞬くたび、否応なしに胸を焦がした。  だけど一方で、

歩道橋から

職場のデスクの上に、ソール・ライターのポストカードを飾っている。雪の積もったモノトーンの世界に、道をゆく人の真っ赤な傘だけが咲いている写真だ。ライターが白黒写真からカラー写真へと移行した時期に撮影された一枚だったと思う。 ときたま、仕事の隙間になんとなくこの写真を一瞥して、拠点を変えることなくニューヨークの日常を撮り続けたライターのことを、私は、ほんのちらっとだけ考える。 高校生になって通い始めた英会話学校は、市の中心部のさらにど真ん中のビル群の中にあって、当時の私は、ビ

愛するということ

人生最初で最後の同人誌ができたとき、解説を寄せて下さった方のところまで献本に行った。「もしも私が私のこの物語を一冊にまとめるのなら、どうしてもこの人に本を締めてほしい」と長年ずっと夢見ていたので、不躾な依頼をご多用の中引き受けていただけたときは本当に安堵したし、きっとこの方が解説を書いて下さるのではなかったのなら、本にはしなかっただろうなと思った。お会いして、ご厚意に甘えて連れて行っていただいた食事処で、私の物語の話をぽつぽつとしながらこらえきれずに泣いたときに、小さくふるえ

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私の中の怪物

 幸せな顔した人が憎いのはどう割り切ったらいいんだ  満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感               ー ヨルシカ/だから僕は音楽を辞めた  私はこの曲をカラオケに行ってよく歌うのだけど、「満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感」というところだけ変に力が入ってしまっていつも声が裏返る。力が入るのがわかっているからちょっとフラットに歌おうとすると、ここは二度目のサビの直前で、その後Cメロに入る、歌に勢いが出てくる重要なところなので、力を抜くと肩透かしし