『はぐれ人魚の耳飾り』
海の中は窮屈だ。お日様を食べて生き、流れのない深海で眠る、私たちに合う環境は広い海の中でもほんの僅かだ。大きな海流に守られた安全な場所で暮らすうちに退化したこのヒレじゃ、そう遠くへはゆけない。私たち人魚はひとたび海流に迷い込めば、どこまでもただ流されて海の藻屑になるしかないと聞かされて育つ。そうして安全ではあるけどどうしようもなく退屈な、この狭い世界に閉じ込められた私たちは、互いに愛し合ったり憎みあったりして、お互いがお互いの枷となって長い年月を過ごす。
みんな仲良くすれば