見出し画像

8.たわいもない話し。かめきちのはなし。



こんにちわ。
2011年に、都内はずれで1人で雑貨カフェを細々とひっそりとオープンしはじめたsaki&pekoと申します。
その後の出来事を綴ってまいります。
少しあやしくふしぎな世界も入りますが、よろしくです。


わたしの店の前に、時々落とし物がある。それは、ハンカチのような単なる落とし物ではなく、明らかになんか変なものだ。

確かとある寒い日だったと思う。
店の斜め前、道路の真ん中あたりに30センチくらいの緑の物体を見た。
なんだ?
近づいてみるとそれは、みどりの亀のぬいぐるみだった。明らかに店の方を向き、まるで店に向かって歩いているようだった。
いや、それはないか。

ゲームセンターとかで、吊り上げたぬいぐるみかもしれない。自転車かなんかで帰り道。荷台からカメを落としたのだな。

わたしは、そのカメを、店の入り口左のところに置いた。
「うちのじゃないよ。だれかの落とし物だよ。落とした人とりにきてね」
そんな気持ちで。

翌日、カメはそこにいた。
毎日通るわけじゃない。まあ、そのうち取りに来るか。わたしはほっておいた。

誰も取りに来ないまま、たぶん1週間くらい経ったある朝。店に来ると店のドアの前にカメがいた。

うう。
カメがまた来た!
なぜ?

たぶん、うちの店のカメだと思った方が、おせっかいにも、店の前に置いたのか!?

「だから、カメはうちのじゃないって!」
わたしはまたカメを左のほうへ持って行って置いた。今回はさらに遠くへ。

数日経った朝、カメはまた、ドアの前にいた。


「おまえ、まさか歩いてきたの?うちの店に来たいの?」
と、あほらしい問いかけをカメにしつつ。
「お前はうちの子じゃないんだよ。お前はたぶん持ち主がいるんだから、その持ち主をおとなしく待ちなさいね」
そう言って、今度は、店の前右の方にカメを移動して置いた。

そしてまた翌日の朝、カメは店の前にいた。

「ちょっと、なんなのー?なんなのよー!?
イタズラか?誰だよー?!」

わたしは、
店の前で途方にくれていると、1人の30代の男性が近づいてきた。
「あの、ちょっといいですか?」

「あ、はい」
「このカメ、あなたのですか?」
彼が聞いた。

あ、もしや、落とした持ち主があらわれた??!
よかったー!

「いえ、誰かが落としたものみたいなんですけど、誰も取りに来なくて、あなたのですか?」

「ちがいますよ」

「え、、、、捨てるにも、持ち主がいたらと思うと、、」
わたしは言った。

「捨てちゃダメですよ。捨てないでください!」
彼は言った。


「え?」わたしは聞いた。

「このカメ、、、生きてるんです、、」

え?
え?

「実は、、ボクが通るたび、、うごいてるんですっ!」

「そ、それは、、、」
ソレハチガウ、、、

うーん、、、
それは、わたしが移動して、、、、とは言えず、、、


「きっと、あなたの店に入りたいんですよ。それにたぶんいいことあると思いますよ」

うーん
うーん

いや、それ以上は言うまい。
彼の夢を壊すまい。
とわたしは、おもう。

「じゃ、店でもらうことにしますね」

「はい!」



カメはかめきちとして、店を守ってくれている。
実は、子供たちに大人気みたいで、みながかめきちに触っていく。

いや、それよりも、彼のような純粋なそんな大人がいることに、乾杯。


ではまたね。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?