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#10 村上春樹の本を読んだら走りたくなる

 このところ、ずっと気分が晴れないような、何をしていても楽しくない、ひどいと何もないのにイライラする、そんな日が続いていた。だから、まず朝起きるのがつらい。別に起きたところで楽しいこともないし、起きたら起きたで面倒なことをこなさなければいけない。そんな面倒ごとに追われているうち、どうせまた一日は終わる。軽い鬱のような、とにかくやる気が出ない日が続いていた。

 こういった気分に陥り、それが幾日か続く、といったことは年に何回か訪れる。そのときに僕が行う対処法は規則正しい生活を送るというものだ。

 家に帰ったら、後のことは考えず、まず湯船にお湯を溜める。我が家には追い焚き機能が無いので、お湯が溜まり次第、すぐにお風呂に入らなければならない。その間、炊飯器のスイッチをオンにしてお米を炊く。そうしてお風呂から上がり次第、残り物なんかで晩飯を済ませ、歯を磨く。これで寝る準備は完了。あとは本を読みながら眠くなるのを待つ。すると、24時前くらいには睡魔がやって来て、僕は布団乾燥機でぬくぬくになったベッドにイン。就寝。

 ところが、普段3時、4時に寝るような生活をしているので、3時間くらいすると目を覚ましてしまい、そこから全然眠れなくなる。結局、再び眠くなるのは明け方近くという始末。

 この日は失敗したが、次こそは上手くいくはず、段々と体をそういう風に慣らせばいいのだ。だけど、やっぱりそう簡単にはいかず、早く寝ても数時間で起きてしまう。

 これを繰り返すうち、どんどんと怠惰になっていき、寝る時間も遅くなり、しまいには風呂さえも入るのが億劫になり、翌日の朝に入ったりするようになる。

 そうなると、メンタルがどんどん悪化していく。感情が薄れ、何を見たり読んだりしても、心がそれに反応しない。あるいは、反応してもとても鈍い。とくにひどかったのは、無心でスイカゲームをやっていたときだ。気付くと2時間くらい経過していて、とても落ち込んだ。

 そうした中で読み始めたのが村上春樹著「職業としての小説家」だ。この本には、村上さんがどうやって小説家になったか、小説を書くために何をしているか、といったことが書かれている。

 僕には、この本を読むことで、この状態から抜け出せるのではないか、という期待があった。以前、村上さんが書いた「走ることについて語るときに僕の語ること」という本を読んだとき、影響されて、ランニングを始めた経験があったから。今回もそのような作用が自分の中で起きるのでは、と。

 案の定、僕は走りたくなり、区が運営している近所のスポーツセンターに初めて赴き、そこでランニングマシンを使って走った。走っているうち、気分が晴れていくのが自分で分かるほど、爽快な気分になった。自分に足りていなかったのは体を動かすことだったんだ、最高の汗を流したと、スポーツウェアから私服に着替えようとロッカーを開けたら、返却されるはずの100円が返ってこなかった。でも、それさえも許せた。どうやら、メンタルはだいぶ回復してるようだ。

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