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素人が1週間で人事制度をつくってから、かれこれ4年経ったので振り返ってみる

スタディプラスに入社してちょうど1年が経とうとしていた2018年末の正月に、私は人事制度を作っていました。

当時の私は、取締役CFO兼管理部長という立場でコーポレート全般を管掌していましたが、人事が私の管掌領域なのか曖昧だった気がします。
他にいないから私だろうと思いつつも、それまで人事の経験などなく、何をどうしていいか分からない状態でした。
そんな私が、正月の1週間で作ったのが今の人事制度です。

それからいくつかの改定を重ねましたが、大枠はこの時作成したもののまま、現時点で4年間運用しています。

なぜ1週間で作ることになったのか、そしてどんな想いでつくったのか、当時の記憶をたどります。

人事制度ができる前

今の人事制度ができるまで、当社に人事制度はありませんでした。
当時社員は20名ほどで、確か半年に一度給与改定を行っていたと思います。
何のルールもない中で行う改定はひどいもので、その度に早く人事制度を作らなければと思った記憶があります。

当時の給与改定は、全社員の名簿を並べて、「この人よりこの人の給与が低いのはおかしいんじゃないか」とか、「この人の給与を3%上げると〇円になるけど、キリが悪いから1万円足しておくか」とか、そんな議論をしていました。
20名ほどですから、全社員の活躍を把握できており、その点では制度が必要な規模感ではなかったのですが、なにせ給与を議論する基準がないので、どうしても感覚で給与が決まってしまうのです。

あなたはなぜこの給与なのか、これからどうがんばったらどのくらい給与が上がるのか、そういったメッセージを伝えることができません。
全社のバランスの中で、結果的にあなたの給与はこの金額になりましたとなっていたわけです。

なぜ素人が人事制度をつくることになったのか

必要性を強く感じながらも、特に進展しないまま2018年の冬を迎えたころ、社長からコンサルを入れて人事制度を作ろうという提案がありました。
人事制度の必要性は当時の幹部メンバー全員が感じていましたし、社内に人事経験者が1人もいなかったので、コンサルをいれて作ろうという社長の提案はもっともです。

ところが、私はこの提案に反対しました。
コンサルを入れて作るには、準備が足りていない気がしたのです。
社内でやりきれないからコンサルを入れようというのにおかしな話ですが、今の状態では当社らしさが出せない、単にコンサルが作った人事制度になってしまうという不安がありました。

そこで、一度自分たちで人事制度を作って運用してみて、そこで感じた課題や限界を並べたうえで、コンサルに入ってもらってもいいんじゃないかと。
そんなわけで、急遽人事制度を作ることになりました。

最初にできた人事制度

2019年4月に施行した最初の人事制度は次のようなものでした。

最初の人事制度

等級制度
1から11の等級からなり、各等級が3つの小区分を持つため合計33区分(1-1等級、1-2等級…11-3等級の33区分)に分かれています。
各等級は、能力評価と情意態度評価の結果で決定します。
能力評価は、統括管理能力、業務遂行力、高度専門性の3つの分野で定義されています。
等級と職位は連動していませんが、部長となる等級の目安が示されました。

評価制度
四半期単位で目標を設定し、その成果を評価します。
目標を達成する過程で育成し、等級を上げることに繋げます。

報酬制度
等級区分が決まると、月額報酬のレンジが決定します。
評価結果に応じて、月額報酬がレンジの中で変動します。

スタート早々に大混乱

月額報酬決定ロジックが複雑すぎる

運用を開始して、まず混乱を招いたのが、月額報酬決定ロジックの複雑さでした。

当初の報酬制度では、等級区分によって給与のレンジが決定し、評価結果に応じてレンジの中での最終的な給与が決定します。
下記の表のように、7‐2等級の人がA評価だと49万4800円、C評価だと48万4400円の月給になるという具合です。

当時の等級と給与の対応表

給与が、等級と評価の二軸で決まるというロジックが分かりにくく、混乱を招きました。

そこで、評価によって給与が変動するのではなく、一時金が支給される制度へと改定することにしました。
現在の制度では、等級が決定すると給与が決まり、これとは別に評価に応じて一時金が決まります。
7‐2等級の人は月額給与が48万6700円で、A評価を取ると別途一時金として5万2500円が支給されるという具合です。

改定後の等級と給与・一時金

この改定によって、等級と月額給与、評価と一時金という対応関係に整理され、シンプルになりました。
なにより、目標を達成すると一時金という形で報われますが、月額給与を上げるには等級を上げなければならないというメッセージを明確にすることができたことに大きな意味がありました。

会社計画を達成するためには、各社員が割り当てられた目標を達成する必要がありますが、それだけでは成長はありません。
目標を達成する過程の中で、社員一人ひとりが成長し、能力を上げなければいけません。
目標を達成することは評価はするけれども、それだけではだめで、個々人の能力を上げることこそが重要なのだというメッセージです。

能力要件が判定できない

もう一つの混乱は、能力評価の定義が抽象的で、各社員がどの等級になるか、当てはめが難しいというものでした。

下記の表のように、統括管理能力・業務遂行力・高度専門性という3つの分野で、それぞれの等級に求められる能力が定義されるのですが、実際に判定するのは難しいのです。

当時の等級表

この問題を受けてどうしようかと考えた結果、なんと下記の表のように、より一層抽象的な定義へと改定することにしました。

現行の等級表

中途半端に定義があると、この定義にとらわれ、当てはめることばかりに気が向いてしまいます。
しかし、どこまで細かく定義をしようと、判定に揺らぎがでない完全な定義など作れないことは分かっていました。
それならば、むしろ定義を大雑把にしてしまい、評価会議の委員が、あるいは上司と部下が議論する中で、能力要件の意味をそれぞれに考えてもらうことにしました。
実際に、評価会議を重ねるたびに、能力の考え方が全社ですり合ってきているように感じています。

等級制度は、給与決定を効率的にするためにあるのではありません。
自分がなぜこの等級なのか、部下はなぜこの等級なのか、真摯に向き合い、どうしたら能力を上げられるのかを考えるために機能しなくてはなりません。

現在の人事制度

現在の人事制度は、下記の通り初版と大きくは変わりませんが、報酬制度と評価・等級制度との関係などが整理されています。

何度かの改定を重ね、その度に当社らしい人事制度になってきました。

現行の人事制度

そして、これから

職種別等級への進化

先に説明したとおり、当社の等級制度における能力要件は、非常に抽象的な定義になっていますが、部署や職種の単位では、もう少し具体的な要件を設定して運用している事例もあります。
定義に限界はありますが、それでも職種を細分化していくと、ある程度分かりやすい定義をつくることもできます。

社員が増え、職種単位でそれなりの規模になったときには、要件を具体的に定義した職種別の等級表を作る日が来るでしょう。

目標設定と評価

今年から社内研修として、評価研修を実施することになりました。
評価者向け研修と被評価者向け研修の両方を予定しています。
評価研修の内容は改めてnoteにしていこうと思っています。

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