見出し画像

ギャップがいい方に働かない

「見た目と中身にギャップがあるね」
と、人から言われることがある。
褒め言葉として言われる場合は素直に嬉しい。
「意外と本を読むんだね」
「意外と優しいんだね」
とか。
‥‥あれ?
それ褒められてるわけじゃないか?


‥‥‥‥。
とりあえずそれらは褒められていたとして話を進めるが、ギャップが全然良い方に働かないことがある。
逆にガッカリされる場合だ。


10代の頃、仲の良い女友達と二人で派手な格好をして、キャッキャ笑いながら表参道を歩いていた時、テレビ局のインタビューに呼び止められたことがあった。
8月だったこともあるのだろう、戦争に関することを若者はどれぐらい知っているか調べている、というような話だった。
普段だったらインタビューなんて絶対嫌で即座に断るが、真面目な内容だったので二人で受けることにした。


形式としては、戦争にまつわる言葉が順番にフリップボードで見せられ、それについて説明するというものだった。
具体的には「疎開」「灯火管制」「千人針」「艦砲射撃」などの言葉だった。


テレビ局側はたぶん、私たちを「ザ・馬鹿な若者」だと見て、とんちんかんな回答が出てくるのを期待していたのかもしれないが、私たちは全問正解だった。
私も彼女も言葉を見せられるたびに、瞬間的に、むしろ食いぎみに答えていた。


インタビューが終わった後、二人でお茶をしながらも戦争についての話が止まらなくなるぐらい、私たちは真面目にそういうことを語り合う仲だったのだ。(今もだけど)


後日、それが放送される日時を聞いていたので、彼女と電話で話しながらその番組を見たのだが、私たちの部分が全カットされていて爆笑した。
放送されていたのは、質問に全然答えられない派手な若者と、たくさん答えられる物静かな感じの若者だった。
私たちはどっちにも当てはまっていなかったのだ。
「えーーー?!まじか!!」
「馬鹿そうな若者が全問正解した方が逆に面白いんじゃなくて?!」
と私たちは文句を言いながら笑った。
ギャップが良い方に働かなかった例だ。


とはいえ普段はそんなこと気にせず暮らしているのだが、意識してしまうのはおじさんを好きになった時だ。
好きになるおじさんからギャップを褒められたことがほとんど無いのだ。
むしろいつもガッカリされてばかりな気がする。


もっと明るいタイプだと思ったのに‥‥
もっとおとなしいタイプだと思ったのに‥‥
もっと派手なタイプだと思ったのに‥‥
もっと清純なタイプだと思ったのに‥‥
もっと凛としたタイプだと思ったのに‥‥
もっと軽いタイプだと思ったのに‥‥
もっと強いタイプだと思ったのに‥‥
もっと、もっと、‥‥


っていうか、どれだけイメージがブレているのだ、私は。
自分がぐらぐらしすぎてる?
ギャップ云々よりもイメージが定まらないのが問題?
でも、でも、良い仲になったおじさんとうまくいかなくなる時って「もっと◯◯だと思ったのに‥‥違った」と思われている気が実際にするのだ。
ギャップのズレが災いしている気がするのだ。


たぶん、私が相手の好きそうな自分でいたいと思って相手に合わせすぎちゃうのだと思う。
無理してそこを強調して振る舞っている内にちょっと違う自分が出ちゃって「あれ?なんかイメージと違うな」と思われて冷められちゃう、みたいな。


でもな。
それはメッキがはがれて地金が出たというよりは、どれも全部本当の私なんだけどな。
派手なところもあるし、地味なところもあるのだ。
日によってだって違うのだ。
「へぇ〜1色ボールペンだと思ってたら3色ボールペンだったのか」みたいに思って、むしろそこを面白がってくれればいいのにな。
たとえが全然ロマンティックじゃないけど。


そして書いているうちに気づいたが、こういう話前にも書いたな。
それだけいつも同じことで悩み苦しんでいる、ということでお許し頂ければと存じます‥‥。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?