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好きな人と同じところで笑う

ちょっと前の話だが、ゲイの友達の1人とその彼氏の男の子と3人で映画を観に行った。
『わたしは最悪』(原題:värsta personen i världen|The Worst Person in the World )というノルウェーを舞台にした映画だ。


女の主人公が、だいぶ年上の夫と若い男との間で逡巡するという恋愛物語の体裁を取りながら、女として生きていくことの複雑さがさりげなく随所に織り込まれていた。

「こういう違和感あるよね〜」
「そんなこと言われたらイヤよね〜」

という共感がすごい。
一方、

「ああ、恋が始まる瞬間ってこういう感じだよな」
「そうなんだよね‥‥どっちかが悪い人なら話は簡単なんだよね。そうじゃないから恋は切ないんだよね‥‥」

という共感もすごかった。
人生の難しさがそのまま恋愛の難しさに投影されているような、そんな映画だった。
いい映画だった。


でも今回したいのはその話じゃないのだ。


映画が始まる前、私たちは3人で軽く夕食をとった。
ゲイの友達というのは仕事上で知り合っただいぶ年上の男の人で、彼氏の方は私よりだいぶ年下の顔も性格も可愛いアジア系の男の子だ。
彼らは、私と同じく(いや、私以上に)年の差カップルなのだ。
2人は数年前から一緒に住んでいるのだが、友達が、
「僕たちはとにかく喧嘩ばっかりしてる。〇〇がいない時はせいせいするもん」
と言えば、彼氏の男の子は、
「僕は全然悪くない。□□がすぐに怒るのが悪い」
などと言い合っていた。


ところが、映画館に入って予告が終わり、本編が始まるのに合わせて照明が落ちるや否や彼らは手をつないでいた。
‥‥超・仲良しじゃん!!
そして映画が始まると、2人が同じシーンで同時に笑った。
しかも他の観客はほとんど笑っていないような些細なくすぐりシーン的な所で。
その後も、何度も2人で同時に笑っていた。


え〜〜〜!
いいな〜〜!


私は、考えてみると愛するおじさまと映画を観て同時に笑った記憶が無い。
まあそれが喜劇的な映画じゃなかったこともあるのかもしれないが、そんなこと言ったら「わたしは最悪」だって全然喜劇じゃないのだ。
彼らはきっと普段からちょっとしたことで一緒に笑っているから、こういう場でもそれが自然に出るのだろうなと思った。


私だったら、
「こんなところで笑ったらセンス無いって思われるかしら」
「レベルが低いって思われるかしら」
などと、おじさまにどう思われるかを意識しすぎて容易に笑えない。
友達といる時の私は非常に笑い上戸だけど、おじさまはあんまり笑わない人が多かったし、私はおじさまの前だと背伸びしておすまししがちだから。
それが下ネタだったりした日にはもう、絶対に笑わないようにしなきゃ!と思う。
(それは正解?)


映画館を出る時に「私たちも年の差恋愛してるから身につまされたね」と言ったところ、また二人は同時に笑った。
喧嘩ばっかりしてるとか言って、それはきっと事実なんだろうけど、本質的に気が合っているのだろうな。
気も合っているし、安心感もあるのだろう。
いいな〜。


好きな人と同じところで笑うってそういうことなのだよな。






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