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弱者に優しい人が好きなのだ

「好きなタイプの男の人は?」
と聞かれた時、2〜30歳以上年上の人がいいというのは言わずもがなとして、それ以外としては真面目眼鏡を掛けている人がいいとか、文化系の人がいいとか、甘えさせてくれる人がいいとか今まで答えてきた。
あとセックスの時に、(以下自粛)


でもよく考えてみると、結局私が好きなのは弱者に優しい人なのじゃないかと最近つくづく思うようになった。


「赤頭巾ちゃん気をつけて」(庄司薫 著)という本がある。50年ぐらい前の本だ。
今まで好きになったおじさま達の口からたまに聞く書名だったので気にはなっていたのだが、あるとき敬愛するおじさまに、
「『赤頭巾ちゃん気をつけて』ってどうですか?」
と聞いたら、
「ああ、悪くないです。決して」
と真顔の即答が返ってきた。
そのおじさまは膨大な書物を読むタイプだが、あまり簡単に何かを褒めない人なので、私はちょっと驚いて、
「めずらしいですね、そんなにお褒めになるの」
と言った。そしてそれなら私も読んでみようと思った。


最高だった。
ああまともな本を読んだ、と思った。
こんな風に考えている人がいるなら世の中も悪くないな、と急に生きる甲斐が出てきた気がして、感動のあまり読み終わった直後におじさまに電話をしたぐらいだった。
それから「赤頭巾」に続く「黒」「白」「青」のシリーズもすぐに読んだ。


「赤頭巾ちゃん気をつけて」は「ライ麦畑でつかまえて」(J.D.サリンジャー 著)とよく比べられているらしい。
だから同じおじさまに、
「『ライ麦畑でつかまえて』はどんなお話なんですか?」
と聞いた。
私はよくこういう馬鹿っぽい質問をしてしまうのだが、おじさまは私を馬鹿にした様子など露ほども見せずに答えてくれる。
その時の言葉を正確には覚えていないのだが、
「ライ麦畑で夢中になって遊んでいる子供たちが崖から落ちそうになった時に、受け止めて助けてあげる人になりたいんだ、っていう話です」
というようなことを言った。
「だから『ライ麦畑のキャッチャー(原題 "The Catcher in the Rye")』です」
と。
私がうっすらこの本に抱いていた印象と全然違う説明だった。
一気に興味が湧いて、即、買って読んだ。


これもまた「なんて良いのだ‥!」と感動し、読み終わった翌日に同じくサリンジャーの「フラニーとズーイ」も買ってきて読んだ。


おじさまの説明の仕方も最高だったなと思う。
たぶん他の人にはもっと深遠な話をするんだろうけど、「赤頭巾ちゃん」に感動したばかりのボヤーっとした私に対して一番ぴったりな言い方をしてくれた。


「赤頭巾ちゃん」は「ライ麦畑」の模倣だとか悪口が言われているようだけど、私から見たらどっちも同じぐらい最高だった。
私から見たらどちらも、弱者と、弱者に対する優しさの話だ。
(人それぞれ解釈は違うでしょうけども)


そして、昔私が好きだったあのおじさまも、あのおじさまも、思い返してみると絶対的に弱者の味方なところがあった。
弱きを助け強きを挫く、的な。
おじさま達の口から何度か「赤頭巾ちゃん」という書名を聞いたのは偶然じゃないのだ。
私そういうおじさまが好きなのだな、きっと。


ただ。
惜しむらくは、そういう優しいおじさま達が私には冷たくしがちなところだ。
なぜだ。
おじさまの中で恋愛は別物なのだろうか?
(もちろん男尊女卑的な、女性蔑視的なところは1ミクロンも無いが)
それとも私は強い方にでも入っちゃってるのだろうか?
(いやいや私に足りない所があるのだ。わかってますわかってます。)


そこだけはちょっと困るけどな。
そこだけちょっと悲しくなるけど、やっぱりおじさま達が弱者の味方であるということは心からいいなと思っている。
だって、たとえ私に優しくても弱者に冷たかったら嫌だもんな。


そりゃあどっちにも優しかったらその方がいいけども。





弱者に優しい人として真っ先に心に浮かぶおじさま


文中に出てくる敬愛するおじさまの他のエピソード


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