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高校生の娘と相性が合う大人との出会い

昨年の今頃は、高校の休校期間が終わり、高1の娘も新しい制服に袖を通し登校して、1ヶ月が経った頃だった。高校生活が始まり、親としても授業の様子や友達関係は気になっていた。

当時娘は、夜になるとひとりで家の屋上に上がり、空を眺めていた。幼いころから夜空を眺めることが好きで、月や星が綺麗に見える日は、真冬でも上着を何枚も重ね着し、クッション性のあるレジャーシートとブランケットを手にして、ひとりで夜空を見に屋上へ行った。

しかし、高校に通い出してからしばらく経つと、屋上へ行く回数も多くなり、少し浮かない表情をしていることも私は気になっていた。中学校の頃は、こちらから見ていても楽しく登校できている様子がうかがえていたけれど、高校生になってからは少し様子が違った。

勉強も難しくなり、部活にもあまり興味が持てない。思い描いていたキラキラとした高校生活と違って、面白みを感じられない様子だった。

少し元気のない娘のことが気になり、たまに私も屋上にいる娘のところに行って、一緒に夜空を眺めた。娘はぽつりぽつりと話しながら、涙を流すこともあった。

娘は中3の時から塾に通っている。高校受験が終わった後、続けるかどうかは本人が決めた。高校生になってからは学校別のクラスとなり、校舎も変わり、ここでも新しい環境になった。

はじめの頃は、今までと違う校舎や講師の方に緊張気味ではあったけれど、塾に行きたくないとは言わなかった。

しばらくすると迎えの車の中で、娘からある講師の方の話を度々聞くようになった。その方は60代くらいの男性で、英語が担当。

「こんな話をしてくれた、あんな話をしてくれた」と言って、矢継ぎ早に私に話してくれるのだ。英語の授業中に、歴史や地理、講師の方の経験談を絡めて話してくださることが、娘にとってはとても面白く感じているようだった。高校の授業では理解しきれていない部分も、塾の授業で理解が深まり、そのことも娘は嬉しそうに話してくれる。

娘が分からないところを理解できるようになることは、私も嬉しい。しかし、それ以上に、家でも、学校でもない場所で、興味を持って話を聞ける講師の方と出会えたことが、私は嬉しい。

私は中学生の頃、社会の授業中、担当の先生から、
「○○(私の旧姓)さんはいつも嬉しそうにニコニコして話を聞いているね。」
と突然話しかけられたことがあった。私としては嬉しそうにしているつもりがなかったので、そう言われてその時は驚いた。

しかし、その社会科の先生の話に、私は飽きることがなかった。その先生の話は、先生のたくさんの知識や体験の中から、ちょっとずつ摘まみとって、話の中に交えてながら伝えてくださった。

まるで父親が子どもの話を聞きながら、対話をするような感じ。クラスには多くの生徒がいるし、授業の進行もあるだろうから、授業中ずっとそういう時間になるわけではないけれど、その先生からは、ときどきそういった雰囲気が垣間見られた。

だから私は先生の話に聞き入っていたし、自然に目がキラキラしていたんだと思う。私は社会科はあまり得意ではなかったけれど、先生の授業は嫌いではなかった。

娘も塾講師の方に対して、そういった感覚があるんじゃないかと思った。娘に講師の方のどんなところが好きなのか聞いてみると
「どこが好きっていうか・・・相性が良いんかな?」
と答えた。

高校時代に相性の合う大人と出会え、関心を向けて話を聞ける時間は、娘にとってとても貴重な時間だと思う。親以外の方の経験や知識を聞き、刺激を受けたり、参考にしたり、見たことのない世界を想像したりして娘の世界が広がっていく。

親の話も素直に耳を傾けてくれる子だけれど、親もひとりの人であり、経験してきたことも限られている。娘が関心を寄せて聞いてきた話を、聞かせてくれることが親としても嬉しいし、参考になることも多い。

高2になった娘は、高1の時ほど夜空を見に行かなくなった。けれども、今でも星空がきれいな日は、いつの間にか部屋からいなくなって、屋上にいる。なにを想いながら過ごしているのかは分からないけれど、きっと娘にとってはひとりで考えるための大切な時間なんだろうな。

塾へも自分で自転車に乗って通うようになった。親としては女の子が夜道をひとりで帰ることは心配にもなるけれど、塾の帰り道に夜風を体に受けながら、そして夜空を見ながら帰る道も、娘の楽しみになっているみたいだ。



今回のヘッダー画像はモリコハルさんの画像をお借りしました。
ありがとうございました☆彡

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