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その9

彼は退職の手続きをするため、あいさつも含め本社へ行く。

俺は「出来の悪いお払い箱社員」といつも先輩や上司に言われていたので、本社に行ったら何て言われるだろう、、、

「辞めてくれてありがとう」とか言われるのかね。

それとも、本社でも怒られるのかな。

俺はこのフィットネス業界でフリーランスになるのに、他のクラブに悪い噂を流されるかもしれん。

そしたら、本社とか死んでも行きたくねーな。

このままボイコットしようか。

でも、行かなければ余計に悪い噂が、、、

いや、そんな噂が立つとは決まっていない。

この1年、俺はがんばってきた。それで良いじゃないか。

この道を行けばどうなるものか
危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ
行けばわかるさ

1、2、3、ダーーー!
アリガトーーーーー!

アントニオ猪木、俺がんばるよ!

ん、いや、アレは一休宗純の言葉だよな。

じゃあ、一休さんにお礼を言うべきか。

じゃあ今夜はカツ丼を食えば良いのかもな。

そんな思考がクルクル高速回転で脳内を巡り巡り、、、
彼は職場の四ッ谷から、本社がある代々木まで、たった5分のJR中央総武線を何時間にも感じていた。

そして、いともあっさり、本社で手続きが済み、一刻も早く帰ろうとしたとき、、、

「ちょっといいかな?」

なんと!
お偉いさん=部長が彼に話しかける、、

ヤベェ!こりゃ終わった!
と、思いきや、部長は彼にこう言った。

「フリーになるんだってね。ここまで、会社の力になってくれてありがとう。君が最近がんばっていることは聞いていたよ。これからは一緒にフィットネス業界を盛り上げていこうな!」

、、、、、はい???

当時の彼は、ワケが分からず、ただ???と思うだけだった。

彼がそれを理解するのもまた、何年も先の話。

敵?

味方?

本来、そんなものすらこの世には存在しないのかもしれない。

敵・味方は、心の弱さがつくり、それを当たり前のものと勘違いし、それを歴史として捉えるのが人間そのものなのかもしれない。


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