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その3

美容師TKYは、彼の髪をカットしながら、自身の目指す美容師像を熱く語った。

彼は昔から、人の話を聞くのは得意ではなかったが、TKYの話は、、なぜか心地良く耳や脳、心に入ってきて、何時間でも聞くことができた。

むしろ、もっともっと聴かせてほしかった。

「美容師のアシスタント期間なんていらない、だってカットできる状態で学校卒業してるから」
「店の回転数を上げて儲けるために、スタイリストをわざと昇格させない」
「マンツーマン美容師(カットもシャンプーもその担当者がすべてやる)こそが、本当の心がこもった美容室!」

美容界の裏側、そして、TKYの思想。
これまでフィットネス業界しか知らなかった彼にとって、新鮮で、世界が一気に広がる話。

そして、カットの腕は、、宇宙的。
今までに見たことのない切り方をしていて、最終的には気に入った髪型になっている。
彼はこれまで特に気に入った美容室が無かった。
それはクセっ毛のせいで、何処へ行ってもイマイチな髪型にしかならなかったから。
TKYは「クセっ毛は直さないで活かすべき」と、彼の満足いく髪型にしてくれた。

TKYは人生相談にも乗ってくれ、経験からのアドバイスも的確。

無茶ぶりもあったが、でも、
それは俺自身がまだ未熟だから!
その無茶ぶりを実現したら無理を通せる力が手に入る!と、彼はすんなり受け入れることができた。

TKYのスイミング指導力・コミュニケーション力・人間力は『まさに今この瞬間につながっている』と確信した。

彼は、自身のスイミングの仕事について、TKYが美容業を独特の視野で見ているのと同じようにさまざまな方向から水泳を見てみたいと考え始める。
スタジオのプログラム、ワークアウト、ヨガやピラティスにも挑戦したい。
そして、他の業界の仕事も経験したい。

『すべてが水泳指導の新境地につながるかもしれない』

彼の中には、膨大な気づきが生まれていた。
同時に、それはこのまま=会社員ではできない!

よし、決めた。
俺はフリーランスになる。


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