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16話

「あたしで良ければ・・・」

彼とコウハイは恋人になった。

好きな人と付き合うと幸せな気持ちになれるということを、彼は初めて知る。

手をつなぐのも、チューするのも、いろいろするのもドキドキする。
これまでスイスイできたことが、好きという気持ちがジャマをして不器用になる。

緊張する。
上手くできない。
自分らしくできない・・・

そんな彼は、空回る自分や、センパイとの間に感じたレベルの『差』などに、自信を失いつつあった。

季節は、冬。

彼は、受けた体育大学、すべて落ちてしまう。

授業は寝る。
サボって部室でゲーム。
女遊び。
恋愛。
部活に全パワーを注いだ高校時代。
運動能力は良くても、勉強がダメなら、体育大学には受からない、自業自得。

何もかもがダメな俺・・・
元気を失った雰囲気や態度が表にも出て来てしまう。

コウハイは彼に言った。

「先輩・・・ごめんなさい、別れてほしい」

うん、分かった。
こちらこそ、ごめんな。

彼には、引き止める勇気すら無かった。

夕暮れの坂道に伸びた2人の影は、夜になれば、何事もなかったかのように消えていく。


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