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「自分にはそれしかない」という強み。


 「自分にはそれしかない」、というのは非常に強いな、と思うのです。


 というのも、2015年4月25日のオードリーのオールナイトニッポンにますだおかだの岡田さんがゲストに来たのですが 
  そこで話していたエピソードにかなり衝撃を受け、そしていまだに忘れられないからです。

 そのエピソードというのは、岡田さんがオードリーに聞かれ、あの伝説的なギャグ「ワオ!」の誕生秘話について語っていたのです。
 もう5年も前の話なのでうろおぼえですが、大体こんな感じでした。




 ますだおかださんはまだデビューして2~3年のときに賞を取って、それで一度バラエティに出たのですが、そこでまったくしゃべれなかったそうです。
 それで番組に呼ばれなくなって、それから数年後に、また別の賞を取って、そこでまた番組に呼ばれるようになったのですが、そこで岡田さんはい以前の失敗を踏まえて、「前と同じようには絶対にならないようにしよう」と決めたそうなんですね。
 で、なんか番組の中でなにかの試食があって、それで岡田さんはいろんなゲストの中で三人目にその食べ物の感想を聞かれたそうなんですね。三人目といえば、もちろん大オチ担当。岡田さんは「なにか言わなきゃアカン!」と思ったそうですが、何も思いつかない。
 頭が真っ白になり、そこで苦し紛れにでたのが、「ワオ!」だったそうなのです。

 もちろん、その場はポカーンという空気になる。
 そりゃそうですよね。まったく浸透してないし、よく考えたら意味わかんないし。いきなり知らない芸人が「ワオ!」というだけで、笑うわけがない。
 でも岡田さんのすごいところは、それをその後もやり続けたことです。
 はじめはとにかく岡田さんが「ワオ!」といっても、めちゃくちゃ滑ったそうです。岡田さんが「ワオ!」というたびに、スタジオがものすごくシーーンとなる。周りからも、しらけた目で見られる。それでも何度も何度もとにかく言い続けたそうです。

 それを聞いた若林さんも驚いて、「それだけ滑っても、それでもやり続けたんですね」と言うと
 岡田さんは当たり前のようにこう答えました。

 「だって、俺にはそれしかないもん」、と。



 わたしはこの話を聞いたときに、ものすごい感銘を受けました。
 感動しすぎて、携帯にこの部分だけを切り取って録音して、何度も何度も聴きました。

 なんででしょうか。
 わたしはこのときに、「自分には、これしかない」というのは非常に強いんだな、と思ったのです。



 岡田さんは一度若い時に賞を取ってバラエティ番組に出たけれども、結果を出せなかった。それから数年後、二回目に呼ばれたときには、「前と同じような失敗はしない。今度こそは結果を絶対に出す」と決めた。
 しかし自分には何の武器もない。見つかったのは、苦し紛れに口から出た「ワオ!」の一つだけ。しかもそれもまったく受けない。だけど自分にはそれしかない。だからそれにしがみつく。しがみついて、しがみついて、とにかく口に出して。いつかそれが誰かに受け入れられることを信じて。

 そしていまや、岡田さんが「ワオ!」というだけで、スタジオが湧くようになった。

 


 そんなことを知らないひとがそれだけを見たら、「『ワオ!』って言ってるだけなのに、どうしてあんなに笑いを取れるんだろう」と不思議に思うかもしれない。

 だけどあれは岡田さんの努力の結晶なのだ。
 「自分にはそれしかない」と思って、そして実際にそれだけをやりつづけた努力のたまものなのだ。


 思えば、あのときからわたしは「わたしには、それしかない」というものを探していたように思います。
 もう見つかったような、見つかっていないような。
 きっとそれは岡田さんのように必死にしがみついていかないとわからないものなのでしょうね。




 




 

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