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特撮じゃない特撮「ウルトラファイト」

「ウルトラマン」シリーズ史上最も異彩を放つものに「ウルトラファイト」(TBS:1970-71年)がある。ぼくは80年代の再放送世代。たしか毎朝5時台に局のオープニング映像、童謡のビデオクリップに次いで放送され、当時ビデオデッキの使い方をおぼえたばかりの兄がまめに留守録していた。

「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」の放送が終わってからの円谷プロには暫しヒット作が出ない低迷期があった。世の子供たちが根本的に“怪獣ばなれ”してしまわないよう応急策として、週5日の5分番組「ウルトラファイト」は生まれたという。内容は既成の戦闘場面を抜粋・再編集し、そこにスポーツ中継仕立ての実況を加えたものである。

ところが、周知の通りウルトラマンが地球に滞在していられる時間は3分弱なので(あんまり長いと制作費がかかりすぎたので)5分番組すら成立しない素材ばかりであることが判明。急遽、セブンを主役にした超低予算での撮りおろし回が加わった。従来の“巨大な怪獣との対決”というテイはなく、ナントカ光線とかもない。ただ単に、広い空き地や水辺などで“成人男性”たちがケンカしているだけの5分間も放送されるようになったのだ。

で、ぼくは幼いながらに撮りおろし回のほうが断然好きだった。再放送時の通常回との割合は8:2くらいで少なかったこともあり、やがて撮りおろし回のことは“当たり”と呼ぶようになっていた。

セブンに挑む日替わりの怪獣の素材感はいずれもナスのおひたしのようにヘナヘナで、誰の目にも再利用品であることは明らかだった(出現時点で薄汚かった)。肝心の戦闘のほうは、攻撃に効果音が足されているものの、足場が悪いところを着ぐるみで動きつづける不自由さのほうが印象強かった。

しかも、声の表情があるようでない戦前生まれ然としたアナウンサー(NHK~TBSに在局しスポーツ中継に定評があった山田二郎)が「セブンの勝利であります」だとか生真面目な実況をやり切るもんだから、始終可笑しくてしょうがない。

シュールという言葉を知ったのはだいぶ後だけれど、制作側の意図とは違う何かに魅力を感じる経験は「ウルトラファイト」が初めてだったと思う。ある意味、今でも鑑賞価値はまったく落ちていないだろう。悩みがある人に薬のひとつとしておすすめしたい。ただし、悩みを忘れることはできても結局ヘナヘナになりそうだ。
  

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吉祥寺出身、和光大学卒。ちょっとしたイラストレーター。

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