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第3のドリフ、仲本工事

年齢順で並べると、
(1)いかりや長介
(2)高木ブー
(3)仲本工事
(4)加藤茶
(5)志村けん 

公開コントの登場順で並べると、
(1)いかりや長介
(2)高木ブー
(3)仲本工事
(4)加藤茶
(5)志村けん 

ボケる頻度で並べると、
(1)加藤茶
(1)志村けん
(3)仲本工事
(4)高木ブー
(5)いかりや長介 

4人体制での実質の地位で並べると、
(1)志村けん
(2)加藤茶
(3)仲本工事
(4)高木ブー

何が言いたいかというと、“第3のドリフ”は仲本さんだということである。4〜5人程度で構成されている洋邦の人気グループにおいて3という数字が似合うメンバーは、後につづくメンバーよりも派手さに欠けるケースが多い。3番目に存在感(知名度)があるわけではないのだ。一般にドリフの名前が1人だけ出てこないとしたら、たぶん彼だろう。荒井注さんを数に入れてさえそうかも知れない。すわしんじさんは、さておき。 

ぼくは昔から3番目に惹かれやすい。まず根本的な趣味として、個々人が記号化されない程度の人数によって1人だけでは不可能なエネルギーが生まれ得る、グループというものが好きである。その均整を影で支える、いわば保護色を有しているのが第3の男だ。

忘れられないコントがある。

長さんの晩年にあたる結成40周年の頃、メンバー自選のコントを紹介していく「ドリフ大爆笑」が放映された。仲本さん自身が選んだのは「もしも笑い上戸の弔問客がいたら」。

神妙な顔をした遺族を前に、終始どうでもいいことで笑いをこらえ続ける無礼極まりない客を演じた傑作である。このとき放映されたバージョンでは伊東四朗さんが旦那役、仲本さんが妻役で、明らかに仲本さんのほうが助演。ゲストが主演を務めるコントを選んだのは仲本さんだけだった。

本作で唯一彼の見せ場となるのは終盤、正座していた足のしびれに気づかず立ち上がり、素早く前のめりにぶっ倒れるところである(ぶっ倒れた瞬間、遺族役のエキストラも顔を隠して笑っていた)。身体能力に裏づけられた職人芸。バタタッという畳の鳴り方も含めて芸術的ですらある。このてに関しては、メンバー5人ないし6人中彼が最も秀でていたことは言うまでもない。好きなんだよなぁ。

ビートルズ来日公演の前座をドリフがやったという繋がりもあって、そんな仲本さんはぼくの中だと“第3のビートル”と重なっている。ジョージ・ハリソン独自のポップセンスが本格開花した曲は「While My Guitar Gently Weeps」だったが、このときリードギターを弾いたのは彼の親友エリック・クラプトンだった。ジョージだって立派なギタリストなのに、大きな見せ場は他人に譲る。これぞ3番目の気質、あるいは宿命である。

ドリフとビートルズをシャレで並べる人はそれなりにいるとしても「While My Guitar Gently Weeps」を聴いたときにぼんやり葬儀場が頭に浮かんでいるのは世界でぼくだけかな。


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