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教員にとっての「社会関係資本」とは?

◾️私が校長1年目で重要視しているのが、「資本」という考え方です。特に教員の「社会関係資本」という内容で、校内だけでなく教員や地域の学びの場や、ネットインタビュー、企業とのマッチングイベントなのでも話す機会が多くなりました。一つ私の中で、大きな括りとしてまとめられてきたので、こちらにも発信しておきたいと思います。

◾️人や組織には、色々な資本があります。お金も資本です。
ただ、私が教員として考えておきたい資本は3つあります。

◾️3つの資本の一つ目は、「時間資本」。これは人間誰にも共通して、1日24時間平等にあります。しかし「働き方改革」にもあるように、時間資本を有効に活かせるかどうかは、家庭・職場環境やその人のマインド等にも大きく影響されます。
二つ目は「人的資本」。教員なら授業や学級経営のスキルを高めたりするでしょう。これは昔から教員が追求し続けたものであり、これを極めたのが「授業名人」。これを目指して切磋琢磨している教員も多いことと思いますし、私も大切なマインドだと思います。

◾️人的資本まで高めることは、大量生産による高度経済成長が実現でき、答えが明確な課題が多かった昭和〜平成初期までの時代までならここまででよかったと思います。
しかし、今は予測不可能なVUCAの時代。課題発見・解決をしていくためには、個人レベルの切磋琢磨では限界があります。自ら社会と繋がり、これら予測不能な課題、答えのない課題に取り組んでいけるようなマインドを高めていく必要があるのではないでしょうか。
それが、今回タイトルにしている3つ目の資本「社会関係資本」です。

◾️学校という現場は、閉ざされた空間になってしまっています。
確かに、地域や保護者と繋がり、行事活動や学習活動に取り組んでいる学校もあるでしょう。
しかし、実際に現場の教員に目をやると、目の前にあるたくさんの教科の教科書内容を時数をカウントしながら子供達に教え切らなければならないし、トラブル対応、事務作業に日々追われ、目の前の仕事をこなすだけで精一杯になってしまっているのではないでしょうか。私は、それこそ教員が「学校という箱モノ」の中で閉塞感を感じているのではないかと考えます。

「学校という箱モノ」にとらわれる閉塞感

「学校という箱モノ」から一度離れて、企業・地域・他校・人材などに目を向けてみるのです。そこで、どこからでも良いので、繋がってみるのです。


外の世界とつながることで「俯瞰力」を高める

すると、学校を取り巻く地域・社会が見渡せるようになり、「俯瞰力」が高められます。

◾️教員がこの「俯瞰力」を高めれらるようになると、新たな取り組み、企業や人材と協働して学習活動をデザインできるようになってきます。
つまり、これまで一人で抱えてきたことが、もっと魅力ある授業に変わっていくのです。
これこそ、私が教員が「社会関係資本」を身につけることが重要であると考える大きな理由なのです。

◾️では、教員が「社会関係資本」を高めると、どのような良いことが起こるのでしょうか。私は次の5つだと考えます。

①「自分にタグをつける」教員のキャリア育成
教員にとって、自分の「好き」と「得意」を増やすことができます。これはただ授業の専門性を高めるという教員としてのキャリアだけでなく、もっと広い人生のキャリアという意味です。タグが多い教員は自己肯定感も高く、学びに対しても前向きになれます。

②「人生100年」人間関係が豊かになる
厚生労働省の「人生100年時代構想会議」中間報告において、「ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。」と記述されています。つまり、人生は一つのキャリアを終えたらのんびりと余生を過ごすというものではなく、人生の第一ステージ、第二ステージ、第三ステージとマルチステージを迎えるのです。これは教員にも当てはまります。これらの人生のマルチステージをよりよく豊かに過ごすためにも必要な考え方です。

③「学校の形骸化」にとらわれない視点
先に「学校という箱モノ」と表現しましたが、まさに箱モノから脱出して広い視点を設けるのです。コロナ禍が緩和され、これまでの学校活動が元に戻ろういとしています。それ自体は素晴らしいこともありますが、これまで当たり前のように行われてきた教育活動そのものが本当に必要なものなのかよく考える必要があります。「昔から行われてきた」という形骸化から抜けようとしない教員のマインドこそ、社会が変わっても学校が変わらない大きな理由なのです。

④教員が主体的なリーダー
これらかの時代を生きていく上で、子供達には「主体的な学び」が求められています。しかし、それを教える教員はどうでしょう?教員は主体的な学びができているでしょうか。これまでの一斉指導の学習方法はあまり変わっておらず、GIGA端末が入って3年目というのにまだまだチョーク&トークの授業が主流です。教員こそ、社会に対して俯瞰力を持ち、自ら外とつながることで新たな視点を持ち、様々なことに挑戦する主体的な学びのリーダーになるべきではないでしょうか。

⑤目の前の教員を見た子供たちが未来に希望
不登校の子供達が年々増えてきています。これらは、社会全体が未来に対して希望が持てなくなっていることが原因の一つではないでしょうか。社会を見渡すと、世の中に対して批判的で疲れているような大人がいっぱいです。全国的に教員不足と言われますが、かつて子供たちがなりたい職業のトップにランキングされていた教師がランク外になっています。教員の魅力を伝えるには、子供達にとって(親の次に)目の前にいる大人である学級担任をはじめとする「教員」こそ、元気で、新しいことに取り組み、ワクワクしている大人の代表である存在になることが大切なのだと考えます。

◾️以上のことから、私はこの教員が「社会関係資本」を高める重要性を感じ、推進しているところです。まだ道半ばですが、次回は具体的にどのような取り組みを始めているのか取り上げたいと思います。



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