師、走る。

　今年も、走り始めた。
　おっかない鬼教師に「廊下は走るな！」と叱り飛ばされても、その足を止めることはない。何が何でも韋駄天の如く、今年を駆け抜けていく気満々である。

　もう師走だ。

　私の記憶が確かならば、つい最近まで、暑かった気がするのだが、一体どうしてしまったのだろう。
　おかしいな、この前まで夏だったよね？
　鈴虫もコオロギもちょっと前まで鳴き散らかしてたよね？
　そんな疑いをかけてみても、今は冬。もうこうなったら、走り続けたまま止まらないのだから仕方がない。
　こっちも意地になって、なんなら追い越してやろうと、今からイベントを先取りし、豆でも撒こうかと思ったが、そんなことをしたら鬼が笑い出すだけでなく、ご近所からヒソヒソされそうなのでやめておこうと思う。

　師走というものは、何だか気ばかりが焦ってしまってどうしようもない。こんなどうでもいい戯言でも言っていないと、なんだか落ち着かないのだ。

　師が走ると書いて、師走。
　その由来は諸説あるが、師と呼ばれるような徳の高い人だって、12月ともなれば、走り回ってでも、今年中に済ませたいことがあるのだろう。お疲れ様です。

　昨年から、こうして物を書き始めてからというもの、家事をやんわりと後回しにする癖がついてしまった。どうにもこうにも、いけない癖である。今までならば、11月にはすべての大掃除を終え、

「さぁ！　大みそか、バッチコーイ！」

　と、いう具合で、意気揚々としていた。しかし今年は、まだ冷蔵庫とガス台と換気扇の掃除、愛するぬいぐるみ達の洗濯を残している。
　バッチコかれては困る状況だ。

　この中でも結構大変なのはぬいぐるみ達の洗濯だ。子供の頃は見向きもしなかったぬいぐるみを、高校生になって急に好きになり始めてからというもの、この年になってもぬいぐるみが大好きだ。数は増やしていないが、お店で可愛いぬいぐるみを見ると、変態みたいに口元がゆるゆるになってしまう。今はマスクがあるからいいものの、いつ善良な市民の方が
「お巡りさんこっちです」
　と、制服に身を包んだ警察官を、私の目の前に連れてくるかわからない。大人がぬいぐるみを好きでいるのもなかなかリスクが付いて回るものだ。

　そんなぬいぐるみ好きの私としては、毎年の洗濯は欠かせない。しかし、水洗いでザブザブやるのも、中の詰め物や、生地を痛めそうで怖いのだ。だから昨年からは、熱めのお湯に溶いた酸素系漂白剤でぬいぐるみを拭いて、熱い蒸しバスタオルで撒き、15分ほど放置して、お湯で拭きとっている。これがなかなか手間なのだ。でも、無抵抗でいてくれるので、赤子を風呂に入れるよりは簡単なことと思い、今後、晴れて乾燥した日にでも、ぬいぐるみ達の洗濯を決行しようと思っている。

　昨年は祖母が亡くなったので、軽めの正月料理だったが、今年はどうしようか。例年は、エビチリや伊達巻も作っていたのだが、昨年のささやかなおせちが、持て余さなくてちょうど良かったこともあり、今年もそうしようかなぁ、などと思い始めている。最終的に、酒飲みには蒲鉾と煮しめがあればいいのだ。後は〆に雑煮を食べればよい。その代わり、今年は豚や鶏もも肉のチャーシューを多めに仕込んでおこう。茹でてつけるだけでお手軽だし、冷凍しておけば、チャーハンにラーメンにパンにと活躍してくれる。

　こうして書いているうちに、正月の準備の展望が見え始めてきた気がする。あと、玄関先に飾るリース型の正月飾りと、正月用のお箸を買わなければ。

　夏休みの宿題を７月中にやってしまわないと気持ち悪い性格の私が、１２月になってまでやることを残しているのは、本当に久々のことだ。考えてみれば、今まで色々なことを先回りしてやって、気忙しくし過ぎていたのかもしれない。あれもこれも済ませてあるぞ、という安心感のために、師走前の楽しみを犠牲にしていた気もする。

　もしかしたら、これくらい安穏と構えているのが、良い按配なのかもしれない。もし、少々焦ることになったとしても、それがいいタイミングだったのだ。そう思うようにして、何とかこの師走を乗り切りたい。

　冷蔵庫の掃除というものは、寒い日にやるに限る。取り出した食材が痛みにくいから、さほど気を使わなくていいからだ。今日（令和3年12月8日）は雨模様で、しっかり寒い。今日こそ、冷蔵庫の掃除の良いタイミングかもしれない。これから少し準備運動でもして、体を温めてから、冷蔵庫の掃除をしようと思う。

　私はこの記事を明日、投稿しようと思っているのだが、さて、投稿する頃には、冷蔵庫の掃除は終わっているだろうか。
　午後からの私に期待したい。

　こちら、昨年のおせちの記事です。ここに書かれている桜エビを炒ったものは、おススメです。バターで炒めて、スパイス塩で味をつけると美味しいです。高級かっぱえびせんといった感じで、お酒もビールも進みます。今年は桜エビをたくさん買っておこうと思っている次第です。