ネコクインテット #毎週ショートショートnote
「おい、何してるんだよ!」
学校近くの公園で、匠が猫を追いかけ回していた。
幼馴染の匠は変わり者だ。付き合いの長い俺は慣れているが、学校の皆はヤツの変人ぶりをまだ知らない。こんなところを誰かに見られたら大変だ。
「モーツァルトの弦楽五重奏曲を猫の声で再現したいんだ!」
匠はクラシックを愛する中一男子だ。特にモーツァルトがお気に入りで、ヤツの家に行くと、俺はいつも弦楽五重奏曲第四番を聞かされた。
「弦の音が猫の鳴き声みたいだと思った瞬間、ピーンときたんだ!」
いくらピーンときたからって、猫を追いかけ回すのはやめてくれ。中学でもイジメられたらどうするんだよ。
俺は家で猫を飼っている子に声をかけ、鳴き声の録音を頼んだ。集まった音源を渡すと、匠はあっという間に猫の弦楽五重奏曲を作り上げ、それを許可なく校内放送で流してしまった。
先生に叱られると思いきや、猫の弦楽五重奏曲は学校で話題になり、何と匠は、皆の人気者になった。
(410文字)
クインテットといえば、弦楽五重奏曲。 弦楽五重奏曲といえば、モーツァルトの弦楽五重奏曲第四番。と、いうことで、こんなお話になりました。
0:31くらいのところが少し猫の鳴き声っぽいのです。
お読み頂き、本当に有難うございました!