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花丸恵の漫筆日和

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思いつくままに書き留めたジャンルなしの日記やエッセイです。
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2021年12月の記事一覧

目が離せない男

 とうとう2021年も大晦日である。  こうも押し迫ってくると、いつでも来い! さぁ来い! どすこい! と四股を踏むが如く、2022年を待ち構えるような気持ちにもなってくる。しかし、1年を振り返ることができるのも、今日だけだと思うと、ゴールテープを切ろうとする師走の健脚に、「ちょっと待って!」と取り縋りそうになる。  振り返ってみると、私が今まで投稿した記事の中で、公開中のものは、当記事を含めて254記事だ。いろいろ書いたが、その中で私が最も印象に残っている記事はこちらであ

五文字で言い切る

 先日、友人に用事があり、電話をした。  気心知れた友との会話というものは、徐々に本題から離れ、完全な雑談になってしまうものだ。その日も、用件から完全に逸脱した会話の中、友人が、 「最近、鬼滅の刃を見ましたよ」  と言った。  私も友人も、あまり流行に乗るタイプではない。その友人が、とうとう鬼滅の刃を見たと聞き、私は興奮した。未だに私は、鬼滅の刃がどんな話なのかをほとんど把握していないからだ。  一度だけ、禰津子という巻物を咥えた女の子が、突然、ひょいと子供のように小さ

そういえばクリスマス前だった

 先程、新年用の日本酒にまつわる話を投稿しようとして、私の手が止まった。そういえば、まだ、クリスマス前だった。  リースを作ったとか、ツリーの飾りつけをしたという話題を方々で目にしていたにもかかわらず、私の頭の中は、暮れと新年のことに気を取られていたのだ。私は仏教徒なので、それでも全く構わないのだが、やはりここはひとつ、彼に謝っておかなければなるまい。 「サンタ、ごめん…」  君を忘れていたわけじゃないんだ。でも、靴下を用意しても、誰かがプレゼントを入れてくれるわけでも

師、走る。

 今年も、走り始めた。  おっかない鬼教師に「廊下は走るな!」と叱り飛ばされても、その足を止めることはない。何が何でも韋駄天の如く、今年を駆け抜けていく気満々である。  もう師走だ。  私の記憶が確かならば、つい最近まで、暑かった気がするのだが、一体どうしてしまったのだろう。  おかしいな、この前まで夏だったよね?  鈴虫もコオロギもちょっと前まで鳴き散らかしてたよね?  そんな疑いをかけてみても、今は冬。もうこうなったら、走り続けたまま止まらないのだから仕方がない。