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さみしいカレー



私はカレーを作ることが大好きだ。


どんな他の料理よりもとびっきり美味しくできる。


どんな他の料理よりも丁寧に作る。


作ると言うか、カレーと真剣に向き合う。


これは私が死ぬほどカレーが好きな人間だ。

と宣言しているのではなく、

カレー作りと自分自身を重ね合わせているのだ。


私は本当に、料理をしてこなかった。

実家ではぬくぬくと育てられた。


一人暮らしを始め、
そこから料理もほぼゼロからのスタートだった。


全ての料理をレシピを見ながら作った。

するとそれなりに美味しいものができるようになった。


そして月日が流れ、炒め物ばかり作っていた私が、

ついに煮炊き物デビューを決めた。


真っ先に作ろうと思ったものがカレーだった。



驚いた 


こんなにも時間がかかるのか
こんなにも鍋の前に立っていなければいけないのか。

料理初心者の私には、
鍋を火にかけて放っておくなんてできなかった。

焦げたらどうしよう
混ぜなくて良いのだろうか
吹きこぼれてしまわないだろうか


その思いがどうしても拭えず、

ずうっと台所に立っていた。

カレーはとても忙しい。

切って、焼いて、煮て、かき混ぜて。
洗い物をして、またかき混ぜて。
ご飯を炊いて、またまたかき混ぜて。


ものすごく熱中した。
何も考えず、
今やるべきことを、やり尽くした。


何度かき混ぜたかわからない達成感からなのか、
純粋にカレールウのおかげなのか、
ほんとうに美味しいカレーができた。


しかし、いつも多すぎる量を作ってしまう。


なんだか少なく作ることはできない。


最初は少ない水から始めても、
気がつけば鍋満タンのカレーができる。

カレーを作るときは、
これから何日もカレーが続くのだ、
とある程度の覚悟は決めている。


それなのに、カレーを食べ続けて3日目のことである。


私は3日目のカレーが大嫌いだ。


昨日も一昨日も食べた味である。
もうどんな味かはわかっているのに、
何故だかうどんにするにはまだ早いような気がする。


案の定食べてみると、昨日と全く同じ味で
二口も食べればもう嫌になる。


ああ、カレーうどんにすればよかったなあ。
味はわかっているのになんで期待してしまったんだろう


そもそも私は何に期待したのだろう。


こんなふうに思う3日目が大嫌いだ。


あんなにドキドキワクワクしながら作ったカレーが
3日経っただけで、もうこんな有様である。


人間の飽き性とは恐ろしいものである。



そんな私は、
これまで長く継続した恋愛経験というものがない。

理由は様々である。

自ら別れを告げることもあれば、
告げられることもある。


私は、あんなにドキドキワクワクして作ったカレーを3日で飽きる人間である。


そんな自分を見て、
私は人を信じることがさらに難しくなった。




自分が3日目のカレーを嫌うように、


自分も孤立し、
同じように嫌われているのではないだろうか。

カレーですら3日も美味しく食べられない自分が、
同じ人を変わらず何年何十年と愛すことができるのだろうか。



そして、何年何十年と愛されるとはどういうことなのだろう。



家族や友達とは全く異なった形態で、愛されるとは

毎日どんな気持ちで過ごしているのだろう。




きっと、この気持ちがわかったときに

3日目のカレーを美味しく食べることができるだろう。



そう信じて、

いや、

何を信じれば良いかは全く検討もつかないが


これからも鍋いっぱいのカレーを作り続けようと思う。

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