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童話小説「ガルフの金魚日記27」

「ガルフ、ガルフゥ」
あの声は…。
暖かい日ざしに、つい、うたた寝をしていました。

「ガルフ。ごめんなさい」
 夏くんの声がします。
 そして、ぷくにあやまっています。
夏くんは、うっすらと目に涙をためています。ほほに涙のあとがついています。

 夏くんのうしろに冬さんが立っています。
 よく見ると、冬さんも泣いていたのかもしれません。目がまっ赤です。
 いったい、ふたりともどうしたのでしょう。ぷくぷくぅー。

 冬さんはいいました。
「夏に、もういたずらしないように言いきかせたから、いままでのことは、ゆるしてやってほしい」
どうやら夏くんは、冬さんにしかられたようです。
冬さんは、夏くんをしかりたくない、といっていたのですが…。ぷく。

 しかし、どうして冬さんまで泣いているのでしょうか。それに夏くんといっしょにあやまってくれています。

冬さんが、これまでのことを、はなしてくれました。
「ガルフを棒で追い回したり、金魚釣りをしたんだって、そんないたずらは許せない。万が一のことがあったらと思うと…。それで、罰として夏を納屋に閉じこめたんだ。すると、ぐえ~ん、と大きな声で泣きだして、その声を聞いて、ぼくもかなしくなって、おもわず涙をながしてしまった」

 冬さんはなんてやさしい人なんでしょう。ぷくは冬さんにかわれ、よかっと思いました。
「そんなことがあったんですか。ぷくは少しも知りませんでした」
「夏、ガルフにけっして、いたずらするんじゃいぞ」
 夏くんは、うんとうなずきました。

「そうでしたか。ぷくは、とっくにわすれていました」ぷくぷくぷく。
「じゃあ、これからもやっていいの」
 夏くんが大きな声でいいました。

 パシーン、と音がしました。
 冬さんが夏くんの頭をはたいた音です。
「ば、ば、ばか。おとうさんの気もち、おとうさんのきもち…」
そういうと、冬さんは今にも泣きだしそうなほど、かなしい顔をしました。

 それを見た夏くんは、あわてていいました。
「じょうだんじゃないか。もうしないよ。だから、泣かないでよ」
 夏くんは冬さんの背中をなでています。

まあまあ、どちらが親なのかわかりません。ぷくー。
ぷくのお父さんなら、こんなとき、どうしたでしょうか。
ぷくを納屋に入れてしかったのでしょうか。

いいえ、ぷくのお父さんなら、決してぷくをしかったりはしないと思います。
じしんがあります。

なぜか、ですか。
それはかんたんです。
ぷくたち金魚だけでなく、おさかなたちや陸を走る動物たち、空を飛ぶ鳥たちも、生きもすべてのお父さん、お母さんは、こどもたちを決してしかったりはしません。

まちがいをおこさないように、やさしく見守ってくれています。そっと手助けしてくれます。
ひとはぷくたち生きものとはちがうのでしょうか。

でも…、でも、一度ぐらいなら、しかられてみたかったなぁ。

     明日の金魚日記へつづく

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