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エリンギとネオン2

手探りの関係、境界線を踏み越える瞬間って、あんなにじりじりして、長く感じるのに、そのときしか味わえない。

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意識は秀の声よりも結ばれた指先に向かう。親指がゆっくりと手をなぞっているからだ。
信号を渡った先、人はまばらだ。
その人影の多くは二つの黒い影が寄り添いあってできている。一つ、また一つと道を曲がりぽかりと四角く開いた暗い穴へと吸い込まれていく。笑いながら、ひそひそ話しながら、無言で駆け込む姿。
そんなものも目に入らないくらいに意識は隣へと向けられていた。

一つ目の角をすぎ二つ目に差し掛かる頃、会話がなくなり歩調が緩くなる。
あーのさ、このまま、付いて来てくれる?だめかな、まだ早い、かな。
急展開に混乱したまま、しかし否定の言葉は紡げず、いや大丈夫、と答えてしまう。
頭の片隅でなにが大丈夫やねんとは呟かれるが、それでもつぶやき程度。頭にかかった霞が晴れるほどの大声ではない。
あたりの人影と同じように一つの塊になって四角い暗がりへ吸い寄せられる秀と私。
自動ドアが開く。イラッシャイマセーという自動音声に我に帰るが、どこでもいい?という問いかけに無条件にうんと答えてしまう程度には頭が働いていない。
エレベーターへ向かう間も離されることのない手。夜の冷えた空気を持ち込みつつも、エレベーターの中は夜の暗闇と昼間の明るさとの丁度中間で、いたたまれない。
真っ暗ならばまだ心臓が怪しい動きをするのを抑えられたかもしれない。
いやそれは私だけで、秀はこの明るさで理性を保っていたのかもしれない。

エレベーターを出るタイミングで離された手。もしかすれば戻るなら今だと選択肢をくれたつもりだったのかもしれない。
今更だ。このタイミングでは意味はない、と後から冷静に思う。なぜなら手を離されても秀の後ろ姿を追うことしか頭になくなっていたのだから。
扉を開けて先に入るように促される。玄関は黄色く明るい照明で、靴を脱ぐので精一杯の広さだ。
秀が靴を脱ぐなか、私は次の扉を開ける。薄暗く、空調の効いた暖かい部屋。顔が熱くなっているのは11月のわりにきつめの空調のせいだろう。
後から入ってきた秀が扉を閉める音がやけに響く。BGMは流れているが、秀の存在感に、行動に、感覚が支配されていた。
無言のままソファに鞄を下ろし、コートを脱ぐ。秀が鞄を置く重たい音がすぐ横で聞こえるのに、顔を向けることができない。
コート、と声がかかる。コート貸して、掛けるから、とハンガーを片手に手を伸ばしてくる。言われるままにコートを渡し、うろっとその場を足踏みしても居心地の悪さは変わらず結局ソファに深く腰掛けきつく膝を抱えて体育座りをして縮こまっていた。
目の前が陰り、秀の膝が片方ソファに乗り上がる。



まだつづきます。えろが足りてない。

1はこちら↓です。


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