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認知症のメカニズム 血管の老化を防ごう 

◆アルツハイマー型認知症とは

もの忘れから始まり、
「ここはどこ?」「今はいつ?」「目の前の人は誰?」
が分からなくなってくる認知症。

どのような仕組みで認知症になるのでしょうか。
認知症の約7割を占める、アルツハイマー型認知症の発症のメカニズムを見てみましょう。

今から約100年前、ドイツにアルツハイマー博士という医師がいました。
博士は、記憶障害や激しい妄想を持つ46歳の女性患者の診察をしていました。
彼女の死後、解剖の結果、脳が萎縮していたことを見つけ、発表しました。
この報告が、アルツハイマー型認知症の発見の始まりです。

◆アミロイド・カスケード仮説

アルツハイマー型認知症の脳に、アミロイドβという物質が見つかりました。
発症メカニズムについて、「アミロイド・カスケード仮説」が有名です。
その仕組みはこうです。

・脳の神経細胞が活動した時に、アミロイドβという老廃物ができる。
・アミロイドβが脳に蓄積し、神経細胞を傷つける
・傷ついた神経細胞の中に「タウ」というたんぱく質が沢山でき、
 神経細胞を死に至らしめる

◆薬の開発の失敗

健康な人の場合、脳細胞のう老廃物であるアミロイドβは排出されますが、アルツハイマー型認知症の人では、脳に蓄積します。
アミロイドβを取り除く薬ができたら、アルツハイマー型認知症は治るように思います。

1999年、薬の開発が始まりました。
マウスでのアルツハイマー病の治療に成功し、
順調と思われた薬の開発でしたが、
重い副作用のため中止されてしまいました。
その後の調査で、驚く発見がありました。

◆本当の原因

薬を投与された人の脳からは、アミロイドβがほとんど消えていました。
にもかかわらず、その人の記憶力は低下し続けたのです。

なぜ、アミロイドβが除去できたのに、
認知症が治らなかったのでしょうか。
その原因について、研究者は脳の血管にあるのではと考えました。

脳の神経細胞の周りのアミロイドβは、きれいに消えていたのですが、
血管の周りにアミロイドβがたまっていたのです。

血管には2つの働きがあります。
1つは、脳の細胞に栄養を運ぶことです。
もう1つは、脳細胞からの老廃物を回収することです。

血管がアミロイドに覆われてしまうと、細胞に栄養を運ぶことも、
老廃物を回収することもできません。

その結果、細胞が死んでしまったのではと推察されます。

◆血管のアンチエイジング

「人間は血管から老いる」と言われます。

糖尿病、高血圧、高コレステロール血症などの生活習慣病によって、
血管は傷つき、動脈硬化を起こします。
その結果、約10年寿命を縮めると言われます。

「生活習慣病がないから大丈夫」と安心しておれません。
アミロイドによって脳の血管が侵され、脳が萎縮しているのです。

血管の老化防止、アミロイドの沈着予防には、
健康的な食事と運動が大切です。

参考文献
青柳由則:『認知症は早期発見で予防できる』, 文藝春秋,2016

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