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バリューの「解釈ずれ」を乗り越える、クレド策定プロセスの全容

こんにちは!エンタメ業界のDXを進めるブロックチェーン系スタートアップのGaudiyで、HR・PRを担当している山本(@hanahanayaman)です。

ふだんは採用や広報、組織開発まわりを色々と担っていますが、今回は「クレドの策定プロセス」についてnoteを書いてみたいと思います。

Gaudiyでは人とカルチャーを非常に重視しており、今回、従来のバリューに加えて、日々の行動指針となるクレド「Gaudiy STYLE」を策定しました。

もともと3つのバリューはありましたが、組織がこの1年で倍の人数になり、30名規模になってきたなかで、バリューの解釈ズレをなくしカルチャーを強くしていくための取り組みになります。

今回は、バリューとは別になぜ新たにクレドを作ったのか、という背景から、実際にやったこととその意図をご紹介したいと思います。

「バリューを作ったものの解釈にズレがでてきている」「バリューやクレドがただの"お飾り"になってしまっている…」こんな方に参考になるnoteかなと思いますので、よければご一読ください!

なぜクレドをつくったのか?

はじめに、言葉の定義と背景から。(HOWだけ知りたい方は、段落ごとすっ飛ばしてください🙏)

まず「クレド」という言葉が聞き馴染みのない方に向けて補足させていただくと、クレドとは「企業に属する人々が心掛けるべき信条や行動指針」のことです。「カルチャーコード」や「カルチャーガイド」と呼ばれている企業もあると思います。

バリューとは何が違うの? と思われる方もいると思います(私もググりました笑)が、行動指針という意味では、ほぼ同義だと思います。ですが一般的には、バリューは企業の価値基準として厳選された軸であるのに対し、クレドはより日々の業務に落とし込んだ行動指針であることが多いようです。

バリューとクレド

Gaudiyでも「Fandom」「New Standard」「DAO」という3つのバリューがありましたが、組織が拡大するにつれて、徐々にGaudiyらしい行動と個々人がとる行動にギャップが生まれてしまったり、新しく入ってくる人に対してGaudiyらしさとは何か、が伝わりきらなくなってきました。

たとえば、リリースまで納期が迫っている場面などでは、「スピードと品質どっちを優先するの?Fandomを考えると品質優先?」みたいな感じで、とるべき行動が不明瞭な部分がありました。

そこで、創業初期にはみんなが暗黙知に理解していたような組織の行動指針を改めて言語化し、日々の業務における意思決定や議論の指針とすべく、クレドを作ることにしました。

全体の策定プロセスは以下です。最初のアンケートからクレド初版ができるまで、数十時間の議論を重ね、期間にして1〜2ヶ月ほどかかったと思います(記憶が怪しい)。

①組織の「形質」を導きだすアンケートを実施
②メンタルモデルの抽出
③経営の理想とメンタルモデルを織り交ぜる
④パターン・ランゲージ化しやすいワードを入れて文章化
⑤未完成のv1として共有、ブラッシュアップ

各ステップでどんなことをしていたか、詳しくご紹介していきます。

1. 組織の「形質」を導きだすアンケートを実施

最初に実施したのは、社員へのアンケートです。「DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)」のバリューに則り、全員が参加するプロセスから始めました。

アンケート項目を作成する上では、組織の「形質」を探るような内容を意識しました。

この「形質」とは何かというと、組織に属する人々が何を思い、どう感じ、どう振る舞うかの基盤であり、組織の核となるものです。

かつ形質は中立的で、ビジネスのプラスにもなればマイナスにもなると言われています。強みにも弱みにもなる組織のカルチャー。それが「形質」です。(詳しく知りたい方は、ぜひ以下の本をご参考ください。)

クレド策定プロジェクトは、経営陣を含む4人のメンバーで実施したのですが、全員が上記の本を読んだ上でキックオフしました。

この形質を導きだすには、「会社で働いていて一番誇りに思うことはなにか」「なにに不満を感じるか」を尋ねると良い(誇りと不満は表裏一体)と言われています。

そうしたセオリーを参考に、形質を導きだすための項目として、以下をアンケートに盛り込みました。(全アンケートはこちらで公開中💁‍♀️)

Q1. あなたがGaudiyで働いている中で、一番誇りに思うことはなんですか?(家族や友人に自慢したくなるようなことは何ですか?)

Q2. あなたはGaudiyのカルチャーのどんな要素が、会社の妨げになっていると思いますか? 特徴的な事例や行動があったら教えて下さい。

この質問から、Gaudiyでは「DAO」というカルチャーに誇りを持っている社員が多いことや、その一方で「自由な反面、規律が弱い」といった形質なども見えてきました。

2. メンバーの「メンタルモデル」を抽出する

次に、メンバーの「メンタルモデル」を抽出する、という手法を取り入れました。ここが、今回のプロセスで最も重要なステップだったと思います。

メンタルモデルとは、人が現実世界をどのように認識し解釈しているかの認知モデルであり、その人にとっての思考の前提を成すものです。

これはデザイン思考の文脈でもありますが、Gaudiyではユーザーやクライアント、社内のメンバーそれぞれの体験設計において、対象となる人のメンタルモデルを把握することを大切にしています。

今回も、アンケートから抽出した要素をモデリングして、メンバーにどのようなメンタルモデルがあるかを整理していきました。

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↑たとえば「DAO」に紐づくメンタルモデル。
自ら挑戦できる、応援する、助け合い、みたいなものが出ていました。

全員の回答をmiroの付箋にすべて書き写し、1つひとつの回答を取り上げながら議論し、似た要素を抽出した上で関連づける。このメンタルモデルを探っていく作業はめちゃくちゃ時間がかかりましたが、のちにクレドの要素を考えたり、文言化する際にとても役に立ちました。

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たくさん付箋ありますが、これでも全体の一部です…

3. 経営視点の理想を、メンタルモデルに織り交ぜる

こうして、組織の形質(=今あるカルチャー)やメンバーのメンタルモデル(=カルチャーに対する認知の仕方)を明確にしたあとは、クレドとして含めたい要素を抽出していきました。

ここで大切にしたのは、「経営視点で行動規範にしたいことをメンバーのメンタルモデルに織り交ぜる」ということです。

どういうことかというと、今あるカルチャーやその認知には、強めたいものもあれば弱めたいものもあります。そのため、ただカルチャーを言語化すれば良いのではなく、経営視点を取り入れてチューニングした上でクレドにすることが大事だと考えています。

たとえば「自由な反面、規律が弱い」という形質に対しては、「自らの意思で挑戦できる」という良い文化は残しつつも、「さいごまでやり抜く」「決まりごとを守る」といった規律の要素を強めたいという経営の考えがありました。

このような議論のもと、そのまま取り入れるものや補正するものなどをクレドの要素として洗い出し、精査して、最終的に16こに絞りました。

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(付箋の色に意味はありません)

ワード選定においては、社外の人にも理解しやすいものにするか、社内用語でも採用するか、という観点は議論に上がりました。(行動探究、メンタルモデル、などは前提知識が必要なので理解しづらい人もいると思います。)

今回の主目的は採用ではなく「メンバー1人ひとりの行動指針」であることから、社内で浸透させたい共通言語をあえて取り入れる形にしました。

4. パターン・ランゲージ化しやすい言葉で文章にする

ここまできたら、あとは今まで洗い出した要素をもとに文章化するだけです。今回は「主文+副文(補足文)」の形で16のクレドを文章化していきました。(全文はこちらのnoteで公開しています。)

ここでのポイントは、のちの使われやすさを考慮して、主文に「パターン・ランゲージ化しやすい言葉」を取り入れたことです。

パターン・ランゲージとは、組織の中で暗黙知になっている行動様式(パターン)を言語化したものです。言いやすく、日常使いしやすいものが良いパターン・ランゲージであり、フィードバックなどでも活用されています。

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「」内がパターン・ランゲージを意識したワードです

実際に、日々の業務コミュニケーションでは「超守しよう」とか「オールオーナーで行動しよう」といった感じで使われていたりします。

また、パターン・ランゲージのSlack絵文字が爆誕したことで、どういう行動がクレドに該当するのかを、日常的に意識できるようになっています。

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誰に依頼したわけでもなく、気づいたらSlack絵文字が爆誕してました…笑

5. あえて「未完成」でリリースする

こうして完成したクレドは、あえて「未完成」の状態でリリースしました。

というのも、日々の業務で使われやすくないとカルチャーとして根付きづらいと考えているので、決まったものではなく「初版」として共有しました。(ちなみにGaudiyではあらゆる制度がv1としてリリースされ、全員でアップデートする運用にしています。パターン・ランゲージも同様で、アジャイルに改善を回しています。)

また、全社共有の際に気をつけたのは、メンバーのメンタルモデルに基づいた伝達の仕方です。

例えば強めたい要素に対して、「いまはここが弱いからこのクレドを入れました」ではなく、「(みんなが誇りにしている)DAOの文化を守るために、全員が会社視点を理解する、全員がオーナーシップを持つ、というクレドを入れました」といった伝え方にしました。

結果として、メンバーからは「すごく共感できた」「ふだんの内省や相互フィードバックにも使えそう」といった反応をもらうことができました。

rickyさん反応

atobeさん反応

みんなの「誇り」とセットでコミュニケーションを取ることで、ポジティブに受け入れることができ、かつメンタルモデルに即した形で腹落ちしやすくなったかなと思います!

まとめ

さいごに、今回のコアな部分をまとめておくと、

1. 組織の「形質」と社員の「メンタルモデル」を探る
2. 経営視点の理想を、社員のメンタルモデルに織り交ぜる
3. パターン・ランゲージ化しやすい言葉で文章にする

この3つがプロセスにおいて特に意識したポイントです。その前提には、Gaudiyではありのままのカルチャーを言語化するのではなく、経営視点を取り込んでチューニングした上でクレドにする、という考え方があったので、企業によって合う合わないはあると思います。

また、取り組みの際に他社さんのクレドを参照させていただいたのですが、ユーザベースさんの「31の約束」やUbieさんの「カルチャーガイド」など、とても言語化が上手でめちゃくちゃ参考にさせていただきました🙏

(思わずツイートしちゃいました。笑)

現在は、個々人にクレドを自分ごと化してもらうため、DoとDon'tを議論するクレドワークショップや、クレドに関連する書籍の輪読会を実施したりと、さまざまな取り組みを進行しています。Gaudiy STYLEの冊子作成や、360度フィードバックなどにも今後取り入れていきたいと思っています。

今後もv2、v3とアップデートしていき、メンバー全員で創っていくことを大切にしたいですし、カルチャーの強い組織をつくっていきたいと思います!

はい。というわけで…

まだまだ粗だらけの組織ですが、最高の仲間とカルチャー、そして全員がビジョンに共感しワクワクしていることは間違いないです。ちょっとでも気になるという方がいれば、ぜひ気軽にお声がけください!

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ではまた〜👋

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!