「巨人の肩の上に立つ」考

研究者御用達、Google scalarのトップページには、「巨人の肩の上に立つ」と書いてあります。おおむね、「先人の積み重ねた発見に基づいて、新しい発見をしていくこと」と言う意味のようです。研究活動において、「先行研究が全くない研究」というものはありえなくて、必ず全ての研究は誰かしらの先行研究の上にのって成り立つものですね、という考え方だと理解しています。そして、巨人の肩の上に立つことで、その巨人よりちょっと高みの、新しい世界が見えてくる。研究というものは、なんて楽しいのだ!ということを示す言葉だと理解しています。

 ところで、この「巨人の肩の上に立つ」という考え方を絵に表してみたいと思います。すると、次の図1のようになると思います。

図1:始まりの巨人と矮人a

図1では、巨人の肩の上に、小さい人(矮人a)が乗っています。巨人の肩の上に乗ることで、この矮人aは巨人(始まりの巨人)よりちょっぴり世界の真実に近づいています。さて、この矮人aが生まれてちょっぴり高みの世界を見つけてから10年後、さらにその矮人aの肩に立つ人物(矮人b)が現れたとします。つまり、10年の時を経て、矮人aの存在は矮小なものではなくて、もはや巨人の1人と言われるようになったのです!もはやこれは矮人Aというよりは巨人Aと呼んだ方がよい。これを絵で表すと図2のようになります。

図1:始まりの巨人と巨人Aと矮人b

さらに10年後、矮人bもまた巨人Bとなり、矮人cがあらわれ巨人Bの肩にのる、矮人cもまた巨人Cとなり、矮人dが現れる…と繰り返していったさまが、図3です。

図3:巨人たちのその後

ここまで書けばお分かりかと思いますが、「巨人の肩の上に立つ」という行為を繰り返すと、巨人はどんどん小さくなっていってしまいます。そして、「ちょっぴり高み」もどんどん小さくなってきて、その差は限りなく平行に近くなり、永遠に「真実」ラインに接近することはない漸近線となっております。このラインを、「巨人限界ライン」と呼びます。もしかしたら、「巨人の肩の上に立つ」という行為は、その立った「始まりの巨人」が決まった時点で、到達できる「巨人限界ライン」(つまり、真実に近づける限界)は決まっているのかもしれません。

これは、あながち冗談だとか言葉遊びではなく、実際に研究とはこういう側面があるかも、と思う瞬間があります。ある巨人に乗って研究を進めていた人々の研究が、どんどん細分化し、はたから見れば何が新しいのか分からない、という事態は、そんなにめずらしくないかもしれません。

では、いったい私たちが真実に近づき、確かな発見を続けていくためにはどうしたらいいのでしょうか。つまり、この「巨人がどんどん小さくなっていってしまう問題」はどうすれば解決するでしょうか。「自分が始まりの巨人になればいいじゃない」なんて声が聞こえてきそうですが、「始まりの巨人」なんてものは理論上の存在で、その巨人もやっぱり誰かの肩のに乗っているものだと思うし、ましてや自分が始まりの巨人になるなんておこがましすぎて無理です。では、我々が巨人の肩に乗りつつ確かに「限界ライン」を越えて真実の高みに近づいていくためにはどうすればいいのか。

私が思いついた解決方法は次の2つです。ご紹介します。

⑴ 2人以上の巨人の肩にのる。

図4:2人以上の巨人の肩にのっている様

巨人が1人だと、肩のサイズも限られていますし、バランスもあまり良くないかもしれません。そんなときにおすすめなのが、2人以上の巨人の肩に乗ることです。そうすると、結構大きな肩サイズが確保できますので、それに伴いバランス良くある程度のサイズの矮人が肩に乗れるようになると思います。それを表したのが図4です。

⑵ 肩サイズを大きくする工事を行う。

図5:巨人の肩サイズを大きくしてのっている様

そもそも巨人の肩サイズが決まっているせいで、近づける「真実」の限界ラインが決まってしまうのです。それなら、まずは肩ごと大きくすればいいじゃない。ということで、図のようにまず巨人の肩の足場を整えて、肩幅を広くします。そうすれば、もともと乗れていた矮人よりは大きな矮人が肩にのって、より高みに近づくことができるようになります。もしかしたら、肩の工事を進めていくうちに、別の巨人の肩とぶつかることもあると思います。「新しいことは見つかっていないけど、必要な研究」みたいなものがここにあたるような気がします。世の中には、とてつもなく巨大で、ぜひ肩に乗せてほしい!と思う巨人は数多くいると思いますが、その中の何人かは、なで肩である可能性があります。そのなで肩をゴツイ体形にトランスフォームするのもこの作業です。

ここでは2つの「巨人がどんどん小さくなっていってしまう問題」対策を考えました。他にも、「巨人がどんどん小さくなっていってしまう問題」の解決方法はあると思います。皆さんが思いついた解決方法も、ぜひ教えてください。





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