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「大丈夫ですか?」は人を救う(かもしれない)

「やだ、やだ、やだ!」

大きな声で泣き叫ぶ、ベビーカーに乗った男の子がいました。

ある平日の朝のこと。少し気怠い表情で混雑した電車に乗る大勢の人々の輪の中で。

その子のお母さんはもう一人、4~5歳くらいの男の子も連れていました。ちょっと離れていてよく聞こえないけど、泣き叫ぶ子に何かを冷静に必死に話しかけている様子。

でも全然泣き止まなくて、「ぜったいいやだ!」と金切声で叫んでいます。なんだか、何がそこまでいやなのかだんだん気になってきたな…。

ますます声は大きく、耳に響くものになっていきます。お母さんはお兄ちゃんも連れて一緒に電車を降りました。

男の子の声の大きさにはちょっとひりひりしてしまったけど、無言の車内で一人戦うお母さんの気持ちを勝手に想像していたたまれない気持ちになりました。

通勤前に子供を送るとこだったのかな?

こうやって電車を降りないといけないなら、朝も早めに家を出るんだろうな。たぶん。

じろじろ見てはいけん、とホームに降りたお母さんにそっと目をやると、別の女性(30~40代くらい)が何か声をかけています。

お母さんは申し訳なさと、どこかほっとしたような雰囲気で何度も頭を下げていました。

「大丈夫ですか?」と声をかけられたのですね。

「大丈夫ですか?」

なかなかとっさに言えない言葉。

…そうか、こんなときそう言えたらよかったんだな。

そのほんの一言で、きっとお母さんはどれほど救われただろう。

外国では泣く赤ちゃんを見知らぬおじさんが変顔であやしたり(笑)、「子供は泣くのが仕事だからね」なんてかっこいいことをさらっと言う人たちを、テレビで何度か目にしました。

自分はというと、小心者なので、

子供がいる人の気持ちなんてわからないくせに…

余計な口出ししないでよ…by母

いい人ぶってるんじゃないよ…

とか、自分で生み出したネガティブな言葉が脳内を駆け巡り、結局動けなくなります。変顔もできない。すみません。

あのとき車内にいた老若男女はどう思ったのだろう。同じ気持ちなのか、うるさいなとしか思わないのか、スマホに夢中なのか。

「大丈夫ですか?」

気負わずさらりと、見知らぬ人に対してその言葉が言えるようになれたらな。そんなことを思った通勤時の出来事でした。









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