大人の私は変なダンスを踊る
気づいたら大人になっていた。
桜の季節は、一気に周りが新しい空気になって、新年とはまた違うソワソワしたような気持ちを感じると同時に、
また一つ歳をとる。
20代の終わりに突然思い立ち会社を辞め、
勢いと共に起業して、
さらに結婚もした。
絶望と苦しみの20代からは想像がつかないくらい、
30代は楽しい。
全く未来はわからないけれど、なかなか幸せな毎日だ。
毎日死にたいと思いながら暮らしていたころには、もう戻りたくない。
なにか決定的なきっかけがあったわけではない。
自己肯定感を上げ、健全な精神で暮らすには日々の訓練と積み重ねだ。
丁寧に毎日を創っていく。
自分の心に向き合って、自分の願いを叶えていく。
残念ながら、突然変異などは起こらなくて、
地道な作業を繰り返していくことでしか、フラットな状態にはなれない。
――――――――――――――――――――――
定期的に会う、学生時代からの友人がいる。
その友人は、昔から本当に優しくて、まさに自分のことより他人のことを優先して、大きな心で接してくれる。
同級生だが、母のようでもあり、姉のようでもある、あたたかい存在だ。
綺麗で仕事ができて、たくさんの人に好かれていて、
なのにそのことをまったく鼻にかけず、
自分にも他人にもしっかり向き合ってくれる。
そんな友人と会う時間は、私にとってとても有意義で大切な時間だった。
いつものように友人と食事をしながら他愛もない話をしていた。
なぜその話になったのかはわからないが、夫の前と友人の前では違う自分になってしまう、という話になった。
「私、夫の前で踊るんだよね」
とポロっとなんとなくいうと、友人は
「え、なにそれ、華枝が?想像できない!」
と大きな目を丸くして驚いた。
友人のグループの中ではどちらかというと人を笑わせるというよりも、ツッコミ役に徹することが多かったし、自分でいうのは何だけれど、クールなタイプに見えると思う。
「そう、なんかね、なんでもないのに変なダンスを踊ってしまうの。たぶんね、その時は5歳児くらいなんだと思う。恥ずかしいけど」
なんでこんな話を友人にしているのか自分ではわからなかった。友人はどんな自分も受け入れてくれる、という安心感があったからなのかもしれない。
友人は想像できない!と笑いながらも、間髪いれず
「最高じゃん!可愛いね。そんな華枝が」
と言ってくれた。
その時はいろんな意味で照れくさくて、はは、ありがとう。と返して、別の話題にうつった。
家に帰って、友人に今日のお礼や写真をLINEで送っていたら、こんなメッセージが来た。
すごくうれしかった。
自分は自分らしくいていいんだな、
と思えた。
そんな風に伝えてくれる友人が素晴らしいのと、
そんな友人がそばにいてくれるありがたさを感じながら、ふと昔の写真を見てみた。
私は幼稚園~小学生くらいまで、笑っている写真がない。
色々理由はあるが、ほとんどの写真をぎゅっと唇をかんだ真顔で撮られていた。
だけれども、3歳頃の写真は、変なポーズをとっていたり、
ひょうきんな顔をしたり、元来お調子者だったんだろう。
5歳児のときにふざけられなかった分、今出ているのだとしたら
夫としては勘弁してほしいだろうが、
こればかりは申し訳ないけど宜しくお願い致します。と謝るしかない。
大人になってもね、大丈夫だよ、いくつになっても遅くないよ。
丁寧に毎日を創って、腐らず、ちゃんと大切なものを大切にしていたら、
大人になって踊ったって、笑ったって、受け入れてもらえるものだよ。
そんな風に、5歳の私に教えてあげたい。
そんなことを気づかせてくれた友人と夫に、ありがとうを込めて。
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