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柔らかいホラー

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一応ジャンルはホラーですが、怖さよりも、ストーリー性や雰囲気を重視しています。一話完結の連作物の予定です。
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予定外の掃除当番(小説#6)

予定外の掃除当番(小説#6)

    長い三つ編みをばっさり切っただけでなく、ベリーショートまで一気に短くしたのは、中学に入学する前の春休み。
    急に風通しの良くなった首の後ろは心もとなく、落ち着かない。でもそれ以上に、予想以上の身の軽さに心が踊った。あんなに重いものをぶら下げていることに、私は今まで無自覚だったのか。

    首の後ろをなでながら、テーブルの上にあったバウムクーヘンの箱を見る。昨日の夜、この箱を捧げも

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放課後の焼却炉・後(小説#5)

放課後の焼却炉・後(小説#5)

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「小学校のとき、とても仲のいい子がいたの。家も近所だし、学校にはよく一緒に通ってた」

    何年も経ち過ぎて忘れそうになるけれど、周りで妙なことが起こりだすまでは、私にも友達が沢山いた。近所のその子とは、お互いの家にもよく行って、一緒に遊んだっけ。この事件をきっかけに、段々話さなくなっていったけれど……。

「その日も、いつも通

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放課後の焼却炉・前(小説#4)

放課後の焼却炉・前(小説#4)

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     ゴウ、と扉を閉めた時の音も、後から思えば奇妙にくぐもっていた。

    思いがけず、クラスメイト達に隠れていたところを見つかりそうになり、とっさに逃れた校舎の屋上。危機を逃れた安堵の溜め息をつこうと、しずきは息を大きく吸いながら前に向きなおり………目の前の光景に、吐き出すのを忘れた。

    空が、あまりに赤い。

 

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連載中の小説の各話をラノベっぽいタイトルにしてみた件

連載中の小説の各話をラノベっぽいタイトルにしてみた件

1.今書いてる小説の各話を、ラノベっぽく説明してみる件プロローグ
お爺ちゃんの家の前でセミファイナル見てたら、急に赤と黒だけの異界に飛ばされました

第1話    消える月
死んだ父親の家に弟といたら、怪奇現象に会うし娘は理解不能だし辛いです

第2話    櫛森第三中学校にて
私の周りで起きる怪奇現象のせいで意識不明だったクラスメイトが目を覚ましたそうです

第3話    放課後の焼却炉(前・後

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櫛森第三中学校にて(小説#3)

櫛森第三中学校にて(小説#3)

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    「忘れるところだったが……」という切り出しが福本旺助の口癖なのは櫛森第三中学校では有名で、この口真似は生徒間で定着したおふざけとなっている。福本自身、真似されていることは知っているはずだが、直す気がないのか、直せないのか。二学期に入りしばらくした今も、彼の担任クラス一年二組の生徒は、何度もこのフレーズを聞かされている。

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消える月(小説#2)

消える月(小説#2)

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「あら?」

    久坂志穂子は思わず声をあげた。
    秋の風を入れる為、窓を開けた先に見えたのは、塗ったように何もない黒い夜空。
    ここに来る途中、遠くの電波塔にかかる白い月を見たはずだが。

    記憶違いのはずはない。
    そのひっそりとした白色に、五年前、棺を閉じる前に目に入った父の死に顔を思い出してしまい

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あの、夕暮れ(小説#1)

あの、夕暮れ(小説#1)

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    あの日、私は母に手を曳かれ、祖父の家の門の前に立ってました。

    夏の終わり、でした。カナカナと寂しげなひぐらしの鳴き声が、どこかから途切れ途切れに聞こえていました。日が落ち始める時間帯でしたが、うだるような暑さは続いていて、ぬるい夕風が頬を撫でていきました。夕日の照り返しでオレンジ色に輝くうろこ雲が、空いっぱいに広が

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