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近藤選手へのアプローチ(後半)

前回のつづき。

東大陸上部の主務から近藤秀一選手のメールアドレスを教えてもらい、今度は直接、近藤選手本人にメールを送ることに。私の指導方針や、ぜひ会って話したい思いなどを書いて送ったところ、近藤選手からもぜひ会って話を聞きたいとの返信が来ました。
当時、近藤選手は東京大学3年の学生で、平日は講義を受けてから部活動という生活を送っていました。月曜の大学講義後なら時間が取れるとのことで、2017年11月13日(月)夕方にJR池袋駅に隣接したカフェで待ち合わせることになりました。近藤選手の通学経路で出やすいということで池袋になりましたが、土地勘がなかった私はマップ検索を駆使して、通りに面したガラス張りの店を見つけました。
先に店に着いた私が、入口からでも見つけやすい場所に席を確保して待っていると、しばらくして近藤選手が現れました。
彼がブログに書いていた内容(ランニングにおける乳酸値の変化)が、私が早大卒論で取り上げた内容に似ていたので、話のネタになればと思い、私は自分の卒論や練習日誌などを持ってきていました。近藤選手も私がチームで行っている個別指導法にも興味を持ってくれたこともあり、初対面ながら話が弾んであっという間に1時間が過ぎてしまいました。お互いその後も予定はなかったので、じゃあもう少し話そうということで夕食(焼肉)を一緒に食べることになりました。

私が選手を勧誘する際、もちろんその選手の実力や走りのセンスも見ますが、一番大事にしているのはお互いの相性(フィーリング)です。そう言う意味では、近藤選手とはすごく相性は良いなぁと感じました。その反面、進路についてはすでに大企業の陸上部から誘いがあったり、大学卒業後は競技を引退してそのまま大学院に進んで研究を続けることも考えたりしていると近藤選手が話していたので、

『縁があって一緒にやれるといいなぁ。』

そんな気持ちでその日は別れたように思います。その後の展開は、近藤選手のnoteもぜひ見ていただけるとよいかと思いますが、やはり私がもっとも印象に残っているのは、2018年4月29日(近藤選手は5月頭と書いてましたが、おそらくこの試合)の平成国際大学記録会前に、鴻巣のスタンドで彼から内諾の返事をもらった時のことです。

『今日の試合、流れに乗って良い走りができるといいね!…ところで進路の方は少し方向性は見えてきたかな?』

『…GMOに入って頑張ってみようと思います。よろしくお願いします。』

『ほ、ほんとに!ありがとう!!絶対に目標を達成しよう!』

『もし近藤君がGMOに入ったら、東大出身初のマラソンのサブテン(2時間10分切り)を一緒に達成しようよ!』

池袋で初めて近藤選手と会った時、私は彼にそんな話をしました。指導者としてその約束を達成する自信はありましたが、彼が果たしてその道を選んでくれるか、私には自信がありませんでした。

『…他の選択肢も魅力的ですが、レールがすでに引かれていて、ゴールが見えているような気がして…でもGMOに入ったら、自分の努力次第でゴールは変わる感じがして、そういう方が自分に合ってる気がするし、なんかワクワクしてチャレンジしてみたくなりました。』

鴻巣のスタンドで、そんな話をしてくれた近藤選手の笑顔は今でも鮮明に覚えています。

2019年4月、近藤選手はGMOインターネット株式会社に入社。GMOアスリーツのメンバーに加わりました。

それから2年が過ぎ、近藤選手はこの3月には東大大学院を卒業、4月から社業と選手業に集中することになりました。
もちろん、私は彼と約束した『サブテン』は必ず達成するつもりです。しかし昨シーズン、想定していなかった5000m・10000mで大幅に自己記録を更新したことで、

『今シーズンは5000mで13分20秒台、10000mで27分台を出して、ニューイヤー駅伝でも区間賞獲って優勝しよう!』

今の私たちの会話はそんな話で盛り上がっています。
近藤選手の未来がこの先どうなって、どこに辿り着くのかわかりませんが、私もワクワクしながら指導していきたいと思っています。(おわり)

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今回、近藤選手のnoteを読んだことがきっかけで、彼との出会いについて書きましたが、GMOアスリーツに所属している他の選手たちとも運命的な出会いがあって今に至っています。それについてはまたの機会に。