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あなた、そしてアートとの距離の近づけ方

距離感が縮まる感覚とは?

行きつけの美容室で、オシャレ雑誌でなく、漫画を読むのが習慣になりました。漫画を読まないタイプの私が、しかも、「東京卍リベンジャーズ」にハマるとは・・・美容師に勧められたのですが、とにかく面白い。

「これだけで平気?」
「この時間でそんなに読めないでしょ(笑)」

6冊分の漫画を取り出し、持ってくる美容師。その大胆な姿に思わず笑顔で反応してしまう私。
そして、ふと身体のどこかが温かく、穏やかになった感覚に気付くのです。それは心臓のあたりかもしれません。極端に言えば、何か緊張がほぐれ、解放されたような感覚です。

思えば、この感覚は別の場所でも遭遇したように思います。
施術で初めて対応してもらったエステティシャンから、帰り際に手を振られたときです。

その温かさは「距離感」が縮まった感覚なのだと思いました。

美容師とはこれまで敬語で話していたし(年齢も相手の方が上だったのもありますが)、初対面なのに手を振るって、大人になった私の経験ではあまりなかったことでした。
ですから、そのような私にとって「タメ語で会話すること」や「手を振ること」は、人との距離感に強烈なインパクトがあったのです。

人との距離感

コーチングでも、コーチとクライアントの距離感はセッションの質に影響するのです。

クライアントと心の距離をつめる(信頼関係を築く)ために、「このセッションで〇〇さんがもっと自分らしく居られるために、私はどのような関わりをしたら良いですか?」と、継続セッションの冒頭でお話しするようにしています。過去「友達と話すかのように接してほしい」というリクエストがあり、ほぼ初対面なのにタメ語で話したり、軽くボディタッチをしながら関わったこともあります。

また、人間である以上、触覚・嗅覚・味覚の共有も、距離感を縮める上で重要である説も納得です。「人間の五感はオンラインだけで相手を信頼しないようにできている」という主旨の記事でしたが、霊長類の第一人者・山極京大総長いわく、オンラインでは共有できない感覚が、信頼の形成に本来重要であると述べています。

言葉ができる前は、人間も五感を通じて身体的につながっていたわけですよ。五感のなかで、一番リアリティをもたらすのは視覚と聴覚です。「見る」「聞く」は共有できる感覚ですから。
触覚や嗅覚、味覚は100%共有することはできません。匂いや味は言葉で表現するのが難しいし、触覚に至っては触っている人は触られてもいるわけだから、その感覚はお互いに絶対共有できない。
ところがおもしろいことに、この触覚や嗅覚、味覚という「共有できないはずの感覚」が、信頼関係をつくる上でもっとも大事なものなんです。
たとえば、触覚は触れると同時に触れられてもいますから、非常に共有が難しい。だから、母子もカップルも、肌の触れ合いを長くすればするほど信頼が高まります。
それは、「触覚」という本来「共有できない感覚」を一緒に経験しているからなんですよ。

アートとの距離感

これは、私とアートとの距離がぐっと近づいたときの話です。
「天才でごめんなさい」の文字に衝撃を受け、足を運んだ「会田誠展」。

見知らぬ誰かから「天才でごめんなさい」と言われたら、違和感を感じる人がかなり多いと思います。ですが、ズカズカ入り込んでくるような大胆さに惹かれた自分がいました。

展示にはかなりの衝撃を受けました。当時は、アートはテーマ自体も美しいものだと思い込んでいましたが、繊細なタッチなのに暴力的で、あまり見たくない部分を丸裸にしているような作品ばかりでした。

例えば、この「ジューサーミキサー」(2001)
観れば何か感じると思うので、ここではあえて内容は語りません。

ミキサー


彼の作風に抗議はつきものです。
女性差別、児童虐待、暴力を肯定する表現であると見なされ「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」から性的描写の理由で抗議を受けました。また、とある公開講座に参加した女性が「彼の作品は環境型セクハラにあって、精神的苦痛を受けた」と、東京地裁に提訴したことも。

ですが、私は会田誠がきっかけでアートの虜になってしまったのです。
私にとってただ美しい存在だったアートが、こんな暴力的な一面も持っていることに、惹かれてしまったのです。「天才でごめんなさい」と、ズカズカと大胆に入り込む様も嫌ではなかったのです。

「会田誠が勝手に、私との距離感を縮めてきた」――― アートとの距離感が確実に近づいた奇跡的な瞬間でした。

人であれ、アートであれ、様々な距離の縮め方がありそうです。そして、何よりも、距離を縮めた先にあるインパクトの大きさにも可能性を感じざるを得ません。


ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日も素晴らしい1日を!



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