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「美しさ」をアート思考で探求する

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

そこには、人の手で創られた自然現象の美しさがありました  ―――
オラファー・エリアソンは、アートを介したサステナブルな世界の実現に向けた試みで、国際的に高い評価を得てきた現代アーティストです。

■「太陽の中心への探査」2017年 

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■「溶ける氷河のシリーズ 1999/2019」2019年 

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私たちと自然との複雑な関係を反映する彼のインスタレーションでは、光、水、霧などが登場します。エリアソン自身が幼少期に多くの時間を過ごしたアイルランドの自然現象が、作品の拠り所になっているかのようです。

彼の代表作の1つとして、「Beauty(ビューティー)」という作品があります。タイトルを聞いて、どんな作品をイメージしますか?

「美しさ」とは何か

ドイツの哲学者バウムガルデン(1714~1762)は、感性的認識についての学を哲学上初めて「美学」として位置づけ、カントに影響を与えました。彼は、「美学は感性的認識の学びである」と定義しました。
それ以降、「美しさ」は学問となったのです。

美学の研究には、「感性」という言葉がよく登場します。対象を観る人の「感じ方」に基づいて、対象の美しさは決定されるからこそ、「感性」が重要な位置づけになってくるのでしょう。

ちなみに、日本語の「感性」という言葉は、明治期にドイツ語「Sinnlichkeit」の翻訳語としてつくりだされました。「Sinnlichkeit」の「Sinn」には、「感覚、官能、感官、意識、気、知覚、自覚、感性、勘、センス、素質、才能、趣味、性格、嗜好、思慮、分別、考え、知力、理性、判断力、心、意志、真意、精神」という意味があることが指摘されています。
この言葉を眺めるだけでも興味深いですね。

さて、あなたにとっての「美しさ」とは何でしょうか?

ここでアート思考の登場です。
アート思考とは、アーティストが実際に行っているような思考法のことで、「問い」に対する「解」を表現するまでの創造的なプロセスのことです。

「問い」というのが、ここでは「美しさ」ですね。
それに対する「解」は、焦って出す必要はありません。アーティストはここで、自分の内面を含む多角的な視点から「問い」を探求します。

幅広い経験や情報(知識)に触れるほど、「解」のセンスは高まります
先ほど、述べた「Sinnlichkeit」の語源を知る前と後では、「美しさ」の捉え方が変わっているかもしれません。「解」は ”熟成”させるほど、興味深いものになるはずです。

アート思考の真髄

先ほどのエリアソンの「Beauty(ビューティー)」という作品は、実はこんなものでした。

■「ビューティー」1993年

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人工的に作られた霧に虹が浮かび上がるシンプルな作品です。作品の近くに行くと、ひんやりとした水しぶきがとても心地よく感じます。
エリアソンの自然に対する想いを前提にこの作品を観ると、彼の持っている心象風景、伝えたい世界観、美しく見せる技術が作品に盛り込まれているのだなと感じます。

彼のスタジオでは日々、実験とリサーチ、コラボレーションによって、さまざまなアイデアやプロジェクトが開発されているそうです。つまり、さまざまな角度から「解」を探求しつづけているわけです。

ちなみに、問いはシンプルであればあるほど面白いかもしれません。
「当たり前」と思っていた定義が、探求をし続ける中で変わっていくことがあるからです。例えば、「美しさ」の定義なんて、ある意味当たり前すぎて深く考えないでしょう。

シンプルなテーマに対して、幅広く深く探求し、自分なりの解を出していくプロセス。これこそが、アート思考の真髄なのです。


ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日も素晴らしい1日を!

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【参考】

「感性ポテンシャル思考法 ゼロからのイノベーション」 村田 智明


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