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AYA世代のがん患者:いつ復職できるのかな

8ヶ月ぶりに職場へ顔を出した。

その日は年に数回しかない特別な講演会の日で、よかったら、と声をかけてもらった。


通勤途中によく寄っていたファミリーマートは、潰れて平地になっていた。
通勤路にいる、おばあちゃんと幼稚園バスを待っている4歳くらいの女の子はだいぶ大きくなっていた。

自分のデスクにあるカレンダーは6月のまま。
机の上は8ヶ月分の書類の山。
デスクにためこんでいたお菓子は賞味期限がとっくに切れていた。
私だけ、8ヶ月前から時間が止まっているようだった。

久しぶりに会う人は「大丈夫?」「会えて嬉しい」と声をかけてくれ、その度に涙がこぼれた。

セミナーの司会は、本当なら私が担当するはずだった。
上司から今年度は引き継ぎたいとお願いされていた仕事だった。
自分の代わりに司会をしている上司を見て、不甲斐ない、申し訳ない気持ちになった。


セミナー後に上司と話した。

がん患者の中には、私の今の状況・体調とほぼ同じでも、仕事をしている人もいればまだ休んでいる人もいる。仕事に復帰するかどうかを私に委ねられているからこそ、休んでいる今の状況を「甘えなんじゃないか」「頑張ればできるんじゃないか」と考えてしまうこと。

戻りたい、戻らなきゃと思ったり、まだ戻れない、不安だと思ったり自分でもどうしたいのかわからないこと。
医者でも上司でも誰でもいいから、「休みなさい」と言ってくれれば楽なのに。

そんなこと言われても上司だって困るよね。
でも、うんうんと頷きながら静かに聞いてくれた。


「今までのようにできない自分を認める、受け入れる」ことがまず第一歩なのかなと思う、と言われた。

確かに、前の自分と比べるから苦しいんだよね。

「あなたの人生だから。少しずつ、焦らずに決めていけばいいと思う」と言ってもらえた。

そうだよね、焦る必要なんてない。
心が軽くなった。

子どもが小さかった時は仕事量を減らしていて、そのときはキャリアが不安になったと自身の経験を語る上司は、「そのときの経験も今につながっていると思う。ちょっとずつでも続けることがきっと大事。」と続けた。



ちなみにこの日は6時間しかいなかったわけだけれど、帰宅後に頭痛、翌日は疲労感Maxでへとへとになった。

ウィッグに慣れてきたとはいえ、一日中かぶっていると締め付けも気になるし痒い。人からの視線も気になる。結構集中できない。
あと毎日長時間ウィッグをつけていると傷むスピードも早くて手入れに時間がかかるのも懸念点。


きっと性格が真面目なんだろうと思う。
抗がん剤が終わって、ありがたいことに発毛もはやく手足の痺れもない。抗がん剤をする前と、体調はほぼ変わらない。
だからこそ、働いていない自分を甘えていると思ってしまう。

復職できない理由を無理やり探しているような気持ちにもなってくる。
こんなふうに言い訳ばかりして、これからずっと生きていくのかな。





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