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金閣寺を読む  第三章  花子出版

こんにちは。

雪降る金閣寺も大好きです。
では、金閣寺を読むの第三章を始めます。


梗概

溝口の父の一周忌。溝口の母は父の位牌を持って上洛し、情に縋って和尚の読経をあげてもらおうとした。この件は溝口は快く思わなかった。母への恕せない出来事があったからだ。
溝口が東舞鶴中学校へ入学し、祖父の家にあずけれら、その初めの夏休みに帰省した時のことだ。帰省先の寺には母の演者の倉井が事業で失敗し、転がり込んでいた。貧乏で蚊帳が一つしかなく、溝口と母と倉井、そして結核の父の四人で寝るしかなかった。そこで母と倉井が行為に及んでいた。父の掌で目隠しをされていたが、微細な動きで、行為に気がついた。
溝口は頑なに目を閉じ、朝を待った。
この記憶を恕してはいないが、母への復讐は考えなかった。

そんな母は、父の命日前日に上洛した。溝口と鶴川は勤労動員の工場から母が待つ金閣寺に向けて帰る。
溝口と鶴川が寺に着くと、母は来ていた。そして、溝口の部屋で母と二人だけになる。母は泣き出すが、溝口は言った。
「おれはもう鹿苑寺の預かりもんやで、一人前になるまで、訪ねて来んといてほしい」と。
溝口は残酷な言葉で母を迎えることが嬉しく、また母の無抵抗さは歯痒かった。溝口が命日後の母の動向を聞くと、母は衝撃的な言葉を残す。
成生にある父の寺の権利を人に譲り、僅かな田畑も処分して、父の医療費の借金を返済した。母は京都近郊の伯父の家に住むとのことだ。
溝口は帰る場所がなくなったのだ。

戦争が終わった。溝口は金閣寺へと走った。勿論、金閣寺は焼かれなかった。溝口は考えた。
『金閣と私の関係は絶たれたんだ。これで私と金閣とが同じ世界に住んでいるという夢想は崩れた。またもとの、もとよりももっと望みのない事態がはじまる。美がそこにおり、私はこちらにいるという事態。この世のつづくかぎり渝らぬ事態・・・。』

その晩、読経の後で講和があった。老師は敗戦のことには触れずに講和を打ち切った。溝口は唖然とし、一年間の世話への恩義や畏敬の念はなく、老師への批判的な眼差しが強まった。

終戦後、見物が多い金閣寺はインフレーションに対応して拝観料の値上げに成功した。国内の拝観者に合わせて米兵もやってくる。英語が必要な場合は、溝口か鶴川が呼ばれる。
とある雪の日のことだ。泥酔した米兵が娼婦とともにジープでやってきた。溝口が案内役を担った。米兵はジープの車内にいる娼婦を呼び、拝観を始める。娼婦は常時「寒い寒い」と連呼した。
拝観を進めていると、米兵と娼婦が口論を始める。溝口が聞き取れないくらいの激しい口論だ。すると、顔を突き出し罵っていた娼婦が、米兵の顔を平手打ち入口へ向かって駆け出した。
米兵は娼婦を追いかけ、追いつくと娼婦の胸ぐらを掴む。娼婦は抵抗しない。米兵が胸ぐらを離すと、娼婦は地面に倒れ込み、米兵を睨んだ。
その時、米兵は溝口に向かって、娼婦の腹を踏めと言い放った。
溝口は多少の抵抗があったものの、米兵の青い目に応じて娼婦の腹を数回踏み込んだ。すると迸る喜びに包まれた。
米兵は溝口を止め、女を抱き抱えるとジープに戻っていった。そして米国タバコを2カートン溝口に渡した。

溝口は昂奮を覚まし、老師のところへ戻った、老師は頭を剃っていた。溝口はもらったタバコを老師に渡した。老師は溝口の卒業後に大谷大学へ行かせると言った。これはよほど嘱望されている証拠となり、たちまち寺中に広がった。


以上梗概。


以下、私の読書感想。

物語は進みます。母への恨みへ付箋が回収されます。母と倉井の行為は、性行為とは書かれていません。ですが、文章から察するにその可能性が高いのではないでしょうか。これも、三島文学に秘められた美学だと考えます。安直に性行為と書けば、作者も読者も楽でしょう。しかし、そうはさせない。何度も読ませて想像力を掻き立たせる。素晴らしい。そんな行為の中、結核の父が溝口の目を掌で覆ったのか。これも議論の余地がありそうですね。
終戦しても金閣が焼けなかった。母が実家の寺を売った。娼婦の腹を踏みつけた。この辺りの溝口の葛藤が少しずつ顕在化してきて、読み応えがあります。


では第四章で!!

花子出版  倉岡剛

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