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シュールと即身仏を巡る旅in新潟

「即身仏を見にいきませんか?」

ゴールデンウイーク、実家(新潟県)に帰省中のナカザワのもとに便りが届いた。

素敵な招待状

帰省中に会う約束をしていた友人からの連絡だった。その日、ナカザワ家ではちょうど即身仏の話をしていたところで、偶然にも完璧なタイミング。

即身仏 (そくしんぶつ)
即身成仏した行者のことであるが,通常その遺体がミイラ化して現存するものをいう。

コトバンク 改訂新版世界大百科事典

穴にこもって読経し、食べ物、飲み物を徐々に減らしていくことでゆるやかに死を迎えにいく、そんな究極の修行を終えた人の姿。即身仏は日本全体で20体前後現存するらしく(諸説あり)、新潟県と山形県に多いらしい。そのうち、今回向かった西生寺では常時公開されている。


すごいのは即身仏だけじゃない

私は数年前のミイラ展にて展示を見たので実際見るのは2回目だった。
受付で参拝を申し込むと、時間を指定されたので、指定時間まで30分ほど宝物館と境内を見学した。

のだが。

この宝物館が天才的にシュールだった。

弘智法印即身仏身替わりの木像や、即身仏に関する資料、雷獣のミイラ、クジラ御霊験骨、大陸オオカミはく製、良寛さま直筆の書など、加藤清正から田中角栄まで宝物を多数展示。

西生寺 境内マップ・見どころ

多数がすぎる。
加藤清正を通って田中角栄に向かうルートがあるなら教えてほしい。

日本画、はく製、書物、人骨、アフリカの人形…どれも気になってじっくり見たいけれど、多様性に満ちた展示物の組み合わせによってか、ここにいていいんだろうか、(正解は分からないけれど)これでいいんだろうか、という不安感と、相反するような高揚感に包まれた。

シュールすぎてつっこみを入れるべきかも悩ましい。


大きな大きな弘智聖人像に見送られた

シュールな宝物館の衝撃が尾を引きつつも、弘智法印即身仏はやはり存在感がすごかった。
誰かのからだが数百年の時を超えて存在することの壮絶さを感じる。


住職さんはお経のごとく流れるように弘智法印即身仏について説明をしてくださった。
どういった生まれて、どういった経緯で入定されたか。

「何万回もああやって説明してるんだろうね」と友人は言った。

文の切れ目がわからないくらいなめらかな語り口だった。

シュール中毒者だったのかもしれない

私は基本的に「シュールなもの」が大好きだ。わけもなく、心動かされてしまう。この衝動を言葉にしたくて、シュールを辞書で引いたら、「シュルレアリスムの略」と出てきた。

最近デ・キリコ展に行って、シュルレアリスムについても勉強していたところ、シュルレアリスムの技法「デペイズマン」を知った。

デ・キリコ展の感想はこちら

デペイズマン
フランス語で「異なった環境におくこと」の意味。美術上の用語としては,シュルレアリスムの一技法をさす。ある物を日常的な環境から異質の環境に転置し,その物から実用的性格を奪い,物体同士の奇異な出会いを現出させる。この方法により人々の感覚の深部に強い衝撃を与えることをねらいとする。

コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

まさに、私が愛するシュールさはこれかもしれない。
物体同士の奇異な出会い。こういうものが人間に衝撃を与えることは技法として確立されていたらしい。
私がシュールを愛するのは、この衝撃に対してのある種の中毒状態にあるというか、酔っているようなものなのかもしれない。

西生寺に関してはその効果を狙っていなさそうではあったが、私の感覚に強烈に記憶された。


【おまけ】最大級のシュールスポット

ついでにシュールの極み、国上寺もご紹介。

お寺自体は非常に歴史のある、立派な古刹だが、日本初のSNS炎上供養(二例目は聞かないが)を始めたり、市の文化財にイケメン官能絵巻を描き込んだり、尖りに尖った戦略により唯一無二の存在感を放っている。

※下のリンクを開くとびっくりするので少し画面から離れてからどうぞ。

「供養したい内容をアップロードしてください」という、一生に一度も使わなそうな表現。


山にある立派な建物、庭もある。そこに際どいイケメン官能絵巻が突如現れる様子はシュールでなくてなんなのか。
まあルネサンスの巨匠ミケランジェロもムキムキお兄さんを礼拝堂にたくさん描いてるし、何百年後とかには馴染んでいるのかもしれない。

あくまでも「いえ、普通ですけど?」という姿勢と、普通思いつかない感じの何かが同居したときに起こるちょっとした違和感、ぞわぞわするようなデペイズマンが癖になる。
そんな素敵スポットがほかにもあれば教えてください。


パノラマタワー編、また書きます。

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