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花束。



いつの間にか
大きくなった左手で
無造作に握られた花束は
君の汚れた靴と地面を見ながら
最後の道を揺られていった


「入学式」と
掲げられた校門を跨いだ
あの日から
「卒業証書授与式」と
掲げられた校門を
永遠に出ていく今日までに
どんなことがあったんだろう


あのバスに乗り
この電車に乗り
自転車漕いで
一緒に歩き
時々本氣で走ったりして


ふざけて笑ってたまに勉強して
得意にも不得意にも
好きにも嫌いにも
向き合ったり逃げ出したりしながら
同じ時間、同じ空間で息をした


この交差点で何度
「おはよう」と言っただろう
あのコンビニで何度
「また明日」と言っただろう


何度、手を振っただろう


子どもじゃないから
できるようになったこと
大人になれなくて
もどかしかったこと


全部、ぜんぶ、花束にして


大人でもなく子どもでもなく
どうしようもなく悩んで迷って
手を繋いで突っ走って
ただ生きた日々が


いつまでも


君を彩り寄り添う花に


なりますように







ご卒業、おめでとう






言葉の海 hana






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