回想録🍀3

記録の続きです。暗い内容ですので、そんな気分は嫌だという方は、ご遠慮くださいませ。

義母が亡くなる2年前に、義父が亡くなりました。
起き上がれなくなってから、半年くらいのことでした。

義父はいつも元気に畑に行って野菜を作っては、山の上から風景を楽しんでいるような人でした。
ある日突然、体がだるいと言って起き上がれなくなりました。
病院に行こうよと促しましたが、病院は嫌いだと言ってしばらく動こうとしない日が続いた為、救急車を呼んでお義父さんを運んでもらい、検査をしてもらいました。
骨髄異形成症候群という診断で、血液がしっかり作られていない、と言われました。
歳のせいもあるので、もう無理はできません。

お義父さんは若い時からお酒飲みで、いつも飲み始めは、愉快なおじいさんでした。
しかしお酒が進むと、夜中中怒鳴り声や机を叩いたり、ひどい時はお義母さんに手が出る時があり、私や主人はよく止めに入りました。
何がお義父さんを、毎晩のように人が変わるくらいに、お酒に走らせるのか？
と私はいつも疑問でした。
大正15年生まれの、戦争を知っている年代の方でしたから、少しだけ察することはできました。呑みたくなる理由があるんだろうな、と思いました。
お義父さんも、そこは多くは語ろうとしませんでした。
しかし息子である主人は、幼い頃からその様子を見ているので、お酒に良いイメージは持てず、お酒=暴力=家庭に良くない事=嫌な物、という図式が出来上がっていたようです。お義父さんがお酒を飲む度に、ストレスが溜まり、「また始まった。」とうんざりした顔をしていました。
なのでお酒を勧められても良い顔はせず、呑みたくないのだそうです。

私はどちらの気持ちもよく分かる気がしました。でも暴力だけはいけません。
私もお酒の事でお義父さんとよく言い合いをしました。

しかし体が起きられなくなってから、お義父さんはお酒を欲しがることはなくなりました。お義母さんとほぼ同時期に体が効かなくなり、人が変わったように、優しいおじいさんに戻りました。きっとこちらが本当のお義父さんなんだろうね、と思いました。
実際、元気な時代お酒を呑んでいない時のお義父さんは、何かを頼むと「俺に任せろ」
と言ってくれて頼もしい気がしたものでした。

検査の結果、貧血がひどかったお義父さんは輸血をしてもらい、一旦は元気が戻り、家で介護の生活になりました。
私は、パーキンソン病がやや進んできたお義母さんと、お義父さんの両方を介護することになりました。
お二人とも、体力が落ちてから、本当に気が弱くなってしまったようで、私に謝ってばかりいました。「おまえには迷惑かけて本当に申し訳ない。」「えみこさん、ありがとう。世話かけてごめんね。」元気だったころには、よく言い合いもする程勝ち気だった二人なのに、こんな風に言われては、逆に悲しくて涙が出てきたものでした。

お義父さんはそれから、再び体が衰えて入院しました。
絶対ずっと元気だと思っていたお義父さんが、亡くなってしまうかもしれない、
という不安が忍び寄ってきた2ヵ月後に、義父は旅立ちました。

看護師さんに、息子の嫁だと言うと、本当の親娘だと思った、と言われた。
そうだね、私たち、本当の親娘のようだったね。
そんな風に言われるような家族になってもらって、ありがとうございました。

お義父さん、もしかしたら、生きているのが辛かったのかもしれないな。
でも、どこまでも弱音というものを言わない人でした。
だからお酒に頼ったのかもしれません。
病気になっても怪我をしても、痛いとか泣き言を聞いたことがありません。
きっと心の中にしまっていたのでしょう。
お義父さんの、何も無くても逞しく生きる力とか、何でもない小さな事を面白がる所とか、自然を体全体で受け止めて愛するとか、自分の作った物や野菜を気前よく親切な人にあげるとか、友人を楽しませることとか、良いところを私は知っていたよ。
そしてたぶん、子供たちのこともとても愛していたのだけど、愛し方が分からなかったんだよね。

たくさんのことを教わったよ。今年も、もうすぐお盆がきますね。
お二人とご先祖様のために、お迎えの用意をしておきます。

ここまで読んでくださった方へ、ありがとうございました。