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幸せのカタチは人それぞれ

私の幸せは日常の中にある。
彼氏と一緒に家で食事をしたり、一緒にYou Tubeを見たり、ただ二人でベッドに並んで横になりながらお互い別々にスマホをいじったり。
なんでもない一日を彼氏と一緒に過ごすのが私の幸せだ。

しかし、彼はときどき私を喜ばせようとして空回る。
例えば突然レンタカーを借りてきて「今からどこかに行こう!」と言ってきたり、私をプールに誘っておきながらあとの行程は私任せだったり。
彼いわく、私の幸せが彼の幸せだそうで、彼の予想通りに私が喜んで楽しまないと機嫌を損ね、八つ当たりしてくる。
子供っぽくてかわいいところではあるが、非常に理不尽である。

たまに私のリクエストで二人で家の近所を散歩する。
春には桜並木を歩き、初夏には蛍を見に。
なんでもない日は近くの本屋やカフェまで、いつもは車で行く道を歩く。
彼は上機嫌な私を見て不思議そうにしている。
きっと彼は、落ち着いて言葉を交わせる散歩に価値を見出していないのだ。

同じように、たまに彼氏に15分ほどのドライブを要求する。
たった15分。どこに寄るでもなく、ただ車を走らせるだけ。
私は車内でなんでもない話をいつもより饒舌になりながらする。
彼はやっぱり不思議そうにしている。「車に乗って喋ってるだけで楽しいの?」と。

彼が用意してくれる美味しいケーキやちょっと質の良い洋服、好きなだけ買っていいよと言ってくれるコスメに海の見えるホテル。
どれも嬉しいけれど、私にとってそれは付随品でしかない。

私にとっての真の幸せは、プレゼントや特別な日ではなく、普通の日を彼とともに過ごす時間にある。

一度だけ彼に伝えたことがある。
「あなたが私の話を聞いてくれるだけで嬉しいし、私は満足よ」と。
以来、外食に連れ出される頻度が減った。
代わりに、彼が家でかんたんな料理を作ってくれる。
麻婆豆腐の日が多いかな。私が好きだと言ったから。

狭いキッチンで手際よく調理をする彼の後ろ姿を見るのが好きだ。
大学時代、体調を崩して電話で泣きついたら、心配して飛んできてくれたのを思い出すから。
あの頃よりだいぶ太ったお腹に抱きついて、共に過ごした10年に思いを馳せる。

ふたりでいろんな経験をしながらおとなになった。
決して順風満帆とはいかない関係だったが、今では彼は私の分身のようで、半身のようで、二人でいる時間が一番心が安らぐ。
彼がどう思っているかは10年一緒にいてもよくわからないが、嫌いだったら10年も一緒にいてくれなかっただろう。

今は私の幸せを彼が叶えてくれているが、旅行や外食が好きな彼だ。
安心して外出できる世の中になったら、今度は彼の幸せを叶えたい。

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