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大人になった瞬間


アートとは関係ないが、夏の思い出No.1は、数年前に亡くなったおばあちゃんとの衝撃的な出来事だ

あれは、私が小学生4年の夏

おじいちゃんは気が弱かったから、おばあちゃんが気が強くなったのか、私からみたおばあちゃんは、女ボスみたいだった
福岡のおなごは、気が強くて情に弱い

おばあちゃんは、細い目の奥がちょっとギラっと鋭くて、私は正直少し怖かった
怒られるというより、なんでも分かってしまうような怖さだ

夏の時期は、おじいちゃんとおばあちゃんは、廃坑になった山の家で過ごすことが多く、
その夏、一週間は山で過ごすことになった


庭には池があって、その横には沢があった
細い沢の水は山の上から流れてきていて、タニシやらカエルやら、普段東京では見ることができない小さな動物たちの宝庫だった


そして、私は可愛い3匹の沢ガニを見つけ
その可愛らしいハサミや目の動きに見惚れていた

沢ガニの親子3匹
大きな蟹はお母さん
次に大きい蟹はお兄ちゃん
一番小さいのは妹

「なんて、可愛いんだろう」


暗くなる前には、私を山に私を連れてきてくれたおしゃべりなおばさんが下界に帰り、私たち3人が残った

相変わらず、おじいちゃんはあまりしゃべらず、
おばあちゃんの目も鋭かった


今だからわかる
なんとかコミュニケーションを取ろうと、
おばあちゃんも必死だったのだと

そりゃ、孫はどんな孫でも可愛いはずだ


夜ご飯になった

ちゃぶ台に座った私の目の前には
見覚えのあるフェイスたち

それは、なんと、素揚げにされた沢ガニファミリーだった
ご丁寧に、お母さん、お兄ちゃん、妹の順番も一緒だ


「あんた、昼間ジーッとみてたから、
食べたかやろ」

「・・・」


小さな心に確実に、
やるせなさ、という大人の感情が生まれた瞬間だった


オーマイガー!


しばらく、ほんとの大人になるまで、おばあちゃんはずっと怖い存在だった


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