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薔薇



朝靄のれて紅薔薇紅きはむ    花


千葉にある薔薇園へ薔薇を見に。
国内最大級の薔薇園。
エントランスの脇にある紫色の薔薇は早咲きだけれど、ちょうど見頃。
入ってすぐ、プリンセスミチコとかプリンセスマサコとかあったし、薔薇の名前はそれだけで辞書が作れそうにさまざま。
もちろん、たくさんありすぎて覚えられはしない。
白薔薇、紅薔薇、濃いピンクの薔薇、薄いピンクの薔薇、黄色い薔薇、オレンジ色の薔薇、白や赤の一重の薔薇、八重咲きで外側が白くてしべのあたりだけピンクの薔薇、赤い八重咲きで中心に向かってオレンジ色になる薔薇、小さな薔薇、つる薔薇などなど。
マスク越しにも清々しい香りが立ち込めているところも何か所かあった。

美代子姉さんは赤い薔薇が好きだった。
10年ほど前、わたしが入院していたときにお世話になった人。
加藤登紀子の『百万本の赤い薔薇』が好きで病室でよく聞いていた。
わたしが先に退院して、小さな赤い薔薇のペーパークラフトをたくさん貼ったカードをお礼に送ったあと、癌で他界したと聞いた。


薔薇に見入ったりスマホのカメラを向けていると、遥かにチャイムが。
そういえば中学生の頃、友達の伯母さんの家の庭に何人かで薔薇を見に行ったことがあった。
黄色い薔薇のアーチは特に見事で、あたり一面爽やかで品のある香りに包まれていた。
一緒に見に行った友達の一人はその後、
薔薇の研究に生涯を捧げるの
と、長野の大学に進んだけれど、今はどうしているだろう。
薔薇の花というのは大人の花、愛の花というイメージがあるけれど、わたしにとってはあの中学生の日々こそが薔薇の時代だったのかもしれない。
今、部屋に花を飾るなら、薔薇や百合より茶室に飾られるような地味な花や野の花がいい。

だから、わたしにとっては、薔薇はわざわざ見に行く花。
眼で見たり、香りを感じたり、写真を写したり。
薔薇の花からは清らかな力がもらえるような気がする。

朝靄がれて薔薇はまるでそれぞれの色を極めるかのように咲き誇っていた。




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