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クレマスター3 何だコレは?は大事な感覚

生徒と現代美術の話をした。

正直、俺も、ようわからんと答えておいた。

先に言っておくが、現代美術はああだこうだというマウント不要なんで、よろしく。

かなり昔。某ゲーム会社の社長さんに「クレマスター3」という映画のチケットがあるから行かないかと誘われた。

マシュー・バーニー、という知らない監督。
しかも「3」。ロードオブザリングの王の帰還から観るようなもんで大丈夫なんかと疑問がビールの泡のように浮かびまくった。

社長さんは「僕も、良く知らないけど、これが一番わかりやすいらしいよ」と言った。

チラシを読むとクレマスターの意味が書いてある。

「睾丸につながる腱をつつみこみ、温度によって伸びたり縮んだりする筋肉」

なるほど、わからん。まったくわからん。

知らなかった知識が1つ増えたのは良かったポイント1である。

あらすじを読むとケルト神話、フィン・マックイール(今やFGOで有名)等が関わっている魅力的な設定。

場面は現代にも飛ぶらしい、義足のモデルさんが、様々な義足を付けて登場。世界的なクライマーが美術館を昇る等、なんだか楽しい雰囲気は伝わってきた。

上映時間も前後編で4時間近くとあったが、映画を観る事自体は好きだったので気にならなかった。

そして、上映。すぐに気づいた。

そうか、この映画はアートが主体なので、台詞とかでストーリーを説明する気が毛頭ないんか。

これは、相当な難易度。俺の映画人生の中でも未体験ゾーンに突入。

なんの脈絡もなく(少なくとも、俺にはそう見えた)。現代のクライスラービルに飛び、そこのエレベーターの内部に無言で泥を詰める男。
そのエレベーターが最上階へと昇っていく映像を体験時間20分程、観させられる、俺。

この時、隣にいる社長さんの顔を確認したかったが、出来なかった。

社長さんまで引いていたら、まだ前編なのに耐えれなくなっちまう。

泥満杯のエレベーターが最上階に到達し、クライスラービル内にあるフリーメイソン会員しか入れない部屋と、そこで行われる儀式の映像が流れる。

これは普通では絶対観られないので食い入るように観た。こんな機会は滅多にない。

その部屋を泡だらけにする意味は、まったくわからなかったが。

本当に大きな盛り上がりもなく、前編終了し休憩時間になった。

会場の空気が困惑で満たされるのをビシビシ感じる。

社長さんも「僕も、今の所よくわからない」と言う。

俺は、まったくわからない。

俺たちは良い。こういうのも仕事の糧になるから。

しかし、カップルで来ている人達は悲惨だった。

なんかこう、洗練された芸術的な何かを観て、良い雰囲気になりたかったのだろう。

後編が始まり、美術館の内部をクライマーが登るという場面になる。

ここで義足のモデルや獣人の様な者たちが現れ、戦ったりするのかと思いきや、そうはならない。

そう、これは分かりやすいエンタメではない。

ブルース・リーの死亡遊戯の様に各界のボスを倒す訳ではないのだ。

現にクライマーは登ったり降りたりする。

俺は、心の中で登るか降りるかどっちかにせい!!

と突っ込んみながらオチをまったが、ここも投げっぱなし的に終わる。

遂に、長かった戦いにも終わりが近付く。体感時間は5時間を超えていた。

またも神話の時代に戻る。

ここで締めらしいものがくるかと思ったが、ぼんやりとしたまま終わる。

この映画は台詞が基本的にない。台詞がないという前情報もないのが、一層体感時間を延ばしていたのだ。
何か説明があるのでは? と観客は期待するから余計客席の空気は重くなる。
もっとも後半は諦めの空気が漂っていたが……
台詞らしいものと言えば、妖精が冒頭で「ウォウウォウォォー」と唸りながら歌っていた記憶しかない。

これで終わり? 何もわからず何も解決しないまま上映は終わった。

その後、社長さんと居酒屋に行った。

席につくなり「河村君、今日はごめんね」と謝られた。

いや、良いですよ。タダだったしと言ったら社長さんが笑い出したので2人で大爆笑した。

その後、映画の事は一切話さずに飲んで食って解散した。

この映画、つまらなかったか?

というと全然そんな事はなく、意味はわからなかったし、かなり虚無ったが、面白い映像は観れたのは貴重だったのよね。

うちの学校でも授業の一環で色々なところに行くけど、学生時代に行ったところは意味がわからないこと、自分にとって役に立つかわからないと思うこともあるかもしれない。
でも、先生や友人と一緒に行かないと絶対体験できない事ってあるのよ。

俺の場合は学生じゃなかったし、先輩後輩の仲に近かったけどね。

俺は芸術の事を語る様なお上品なセンスは持ち合わせておらんし、クレマスター3で授業やれって言われたら断るけど、一つだけ言えることがある。

アートって頭に焼き付いたら勝ちだと思っているのよね。

クレマスター3は、そういう意味では凄い作品だったと思う。

何年たっても思い出すし、こういう解釈だったかもと想像できるしね。

わかんない、つまんない、おもしろくないも大事な感覚で、じゃあ「何で」と考えられる様になると良いよね。

ああ、でもクレマスター3を観る時は、それなりの時間と覚悟はしてねw

オススメはしないよw

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