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朗読

我が家で行われている二種類の朗読について、書いてみる。

朗読でコテッと眠る人

私には不眠の傾向があり、病院で睡眠導入剤(ゾルピデム)を処方してもらっているのだけど、近頃では薬だけでは眠れない夜が増えてきた。

それでいろいろと工夫をしてみた結果、私にとって一番効果があるのは、「本を読んでもらうこと」だと分かった。

自分で読書していると、脳が活性化してしまって、せっかく飲んだ睡眠導入剤が無効になってしまう。

けれども、誰かに本を読んでもらうと、どんなに本の内容が興味深くても、あっという間に寝入ってしまう。(もっぱら高1の末っ子にお願いしている)

しかも、読んでもらって爆笑するような本のほうが、あまり笑えない本よりも、よりよく眠れるようなのだ。

ゲラゲラ笑ったと思ったらもう意識がなくなっていることも多く、読み手が驚いて起こしにかかることもある。

こちらとしては、そのまま寝かしておいてくれればいいと思うけれども、笑っている最中にいきなり寝てしまうのだから、見ている側が不安になるのは無理もない。


これはどうしたことなのか。

本を読んでもらっている私の脳の中で、一体何が起きているというのだろう。


ゾルピデムという薬剤は、ウィキペディアによれば、脳のGABAの受容体(ギャバ・エーレセプター)の一部に作用することで効果を示すものであるという。

一般にGABA(ギャバ・γ-アミノ酪酸)といわれる神経伝達物質は、脳神経の興奮を抑えて抑制する働きがあるという。

ゾルピデムは、そのGABAと同じように働いて、鎮静作用を増進させるものであるということらしいと、脳科学の素人は大雑把に理解している。

脳が興奮していては眠るに眠れない。薬剤でGABAが増えたような状態を引き起こして、入眠しやすくしているのだろう。


では、本を読んでもらって笑うと眠くなるのは、なぜなのか。

GABA関連の記事をネットで探していたら、笑いでGABAが増えるという情報があった。


GABAと笑いによる心身の健康効果を確認(ギャバ・ストレス研究センター)
http://www.gabastress.jp/result/2011/05/gaba_1-2.html


ここで紹介されている実験によると、GABAを摂取してからお笑いを鑑賞すると、ストレス物質が減って、かわりにセロトニンが増加すのだという。


毎晩、ゾルピデムを服用してから本を読んでもらって爆笑している私の場合も、GABAを摂取したあとにお笑いを見て幸せになった被験者たちと、同じ状態になっているのかもしれない。

爆笑しない場合でも、末っ子の朗読を聞いていると、寝つきが格段によくなる。

YouTubeなどに「睡眠導入用」の朗読動画が大量に上がっているのを見ても、朗読が不眠対策になると感じている人は少なくないのだろうと思われる。

笑いを伴わない朗読も、脳神経に何らかの効果を及ぼしているのではないかと思うのだけど、残念ながら、朗読と脳神経との関係について、科学者が詳しく調査したような記事をネットで見つけることはできなかった。

いつの日か、薬なしで健やかに眠れるようになりたい。そのためにも、朗読を含めて、いろいろな工夫をしてみようと思っている。


朗読で常同行動が止まる人


私の息子(22歳)は、重い知的障害を伴う自閉症である。


知能検査(田中ビネー式)でのIQの数値は20台。

ごく簡単な言葉での指示を理解して従うことができるけれども、会話は困難で、日常生活では常に介助が必要となる。

息子が小さかったころは、絵本などを読み聞かせてみたり、幼児向けのアニメのビデオをたくさん見せたりして、喜ばせようとした。自分が本好きだから、自分の子どもにも読書を楽しめるようになってほしいと思ったのだ。

けれども、息子は絵本の読み聞かせを全く好まなかった。読んでやろうとしても、本を強引に閉じるか、立ち去ってしまうのだから、あきらかに嫌っていたのだと思う。

一人で絵本を開くことも、ほとんどなかった。そもそも、絵を見ることに、興味がないようだった。

それならばと、絵ではなくて、お話だけが書いてあるような低年齢向けの本を用意してみても、やっぱり全く興味を持たなかった。

そんなわけで、息子を本好きにしようという野望は、早々と捨てることになった。


ところが、上のほうに書いたような事情で、家庭内で朗読の習慣が発生すると、どうやら息子がそれを「聞いて」いるらしいことが分かった。


私の睡眠導入のために朗読してもらう本は、もっぱら私の好みで選ぶ。脳神経学者の本や、倉橋由美子や、養老孟司など、およそ子供向けではない本であっても、息子は「聞いて」いる様子がある。


しかも聞いたあと、しばらくの間、とても穏やかな表情でいたりする。


というわけで、息子に本を読んでやる試みを、十数年ぶりに再開してみることにした。

幼児向けの絵本や、子ども向けの読み物は、決して選ばない。


どんな本を気に入ってくれるかは想像もつかないけれども、いろいろ読んでみようと思う。


※画像はフリー画像素材サイト「pixabay」からお借りしています。


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