売り手と買い手の認知と価値観

物事に意味づけをするのがマーケターの役割だと言えます。

水産庁に寄せられた質問への回答が秀逸だと話題になっていました。

Qクジラは特別な動物と思わないか?

A
クジラに限らず、すべての動物が特別なものです。すべての動物がかけがえのない生命を持ち、食う食われるの関係で生態系の中での役割を果たしています。もちろん、人間もこの生態系の一部です。他方、人間は様々な民族や国民が様々な生き物に特別の地位を与えています。例えば、多くの国で食料とみなされる牛も、インドでは神聖な動物です。ある民族や国民が自らの特定の動物に対する価値観を他の民族や国民に押しつける行為は許されるべきではありません。これは、クジラについても同様です。全ての生物を客観的に理解することが必要です。(出典 水産庁)


複数の正解


質問者は、「クジラは特別な動物だ」と認知しています。一方、回答者は、「すべての動物が特別だ」と認知しています。

質問者は「特別な動物を食べるのはおかしい」という価値観を持っており、回答者は「特定の動物だけを特別視するのはおかしい」という価値観を持っています。

両者が見ているのは、どちらも「海で生活する巨大な哺乳類」です。どちらが正しいということはなく、物事を捉える人にとってそれが正しいことでしかありません。

認知と価値観のギャップを埋める

マーケティングの現場においても同じことが起こっています。売り手は自社の商品を優れているものと認知します。買い手はそれをそう認知していないので、買わないという状況が生まれているだけです。

そこで我々がやるべきことは、相手に自分たちと同じ認知をしてもらい、相手の価値観に基づいて行動をとってもらえる状態をどう作れるか?を考えて実行することです。

例えば、”この課題にはこの解決策が必要だ”ということを認知してもらうための情報発信をしたり、”みんなが使っているものが安心できる”という価値観に対してクチコミを集めるなど。

相手の価値観にフィットさせる

価値観とは、その人のものの見方や捉え方など、行動を取る際の判断の基準のことです。それはその人の経験によって作られます。

例えば、頑なに病院へ行くことを拒む人がいます。その人は過去に病院で嫌な思いをしたか、病院へ行っても良くならないという情報に触れたために、「病院へは行ってはいけない」という価値観を持っているということです。

なので、初めて手に取るジャンルの商品であれば、とても警戒心が強くなります。経験していないので、判断基準を持ち合わせていないからです。

予測のつかないものに対して人間は不安を感じます。良い結果を得るよりも、損失のリスクを避けたいという欲求の方が強いので、初めて手に取るジャンルの商品に対しては慎重になってしまいます。

すでに使っているジャンルの商品であれば、その手の商品自体への警戒心はありません。

今使っているものが比較軸になり、それよりもより良いかどうかという検討軸を持っているので、どのポイントに不満があり、どう解消してくれる商品があれば買い替えるのかを見極めることになります。


それぞれ相手の価値観に沿ったコミュニケーションが、売り手と買い手との距離を縮めていきます。

見込み客があなたの商品をどう認知し、どんな価値観によって選ばない判断をしているのかを考えて、そのギャップを埋めていく活動がマーケターの仕事だと言えます。

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