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縁切り神社のはなし

ー京都・安井金比羅宮ー

おどろおどろしいものに惹かれる。
妖怪や魑魅魍魎、心霊や都市伝説が好きだ。

京都は、そんな私の好奇心をくすぐるスポットだらけだ。
魔界スポットをひとつでも多く訪れるにはどうしたらいいか、
スケジューリングするのが楽しい。

その中でも「縁切り神社」として有名なのが今回おはなしする
「安井金比羅宮」である。

1.安井金比羅宮と崇徳天皇

安井金比羅宮の歴史は古く、藤原鎌足の頃(668年頃)まで遡る。
御祭神は源頼政公、崇徳天皇、大物主神。
そして、縁切りとされる由来は崇徳天皇に関係している。

崇徳天皇は、位の高い身分でありながら、辛い人生を送る。
保元の乱(1156年)で敗れ、罪人として讃岐(現・香川)に配流される。
その後は、恨みを抱えたまま、京に戻ることなく崩御された。

崩御した後も、朝廷からはその存在を無視され続ける。
そして、崇徳天皇崩御後の京では、様々な厄災が降りかかることになる。
後白河院が、崇徳天皇の怨霊を鎮めるため、現・安井金比羅宮のある地に、光明院観勝寺を建立したことが、安井金比羅宮の起こりといわれている。

2.縁切りの所以

なぜ、安井金比羅宮が縁切り神社といわれるのだろう。
崇徳天皇が配流された讃岐の地で、欲を断ち切って籠っていたことから、「断ち物祈願」の神社とされているのだ。

また、崇徳天皇は讃岐に配流されたことで、寵愛した阿波内侍と離れ離れになったまま、讃岐の地で崩御された。
そこで、幸せな男女の縁を妨げるすべての悪縁を断ち切る=悪縁を切る、となったそうだ。

男女の縁を妨げるものだけではなく、病気、酒、タバコなど、全ての悪縁を断ち切る祈願もできる。

3.縁切り縁結び碑(いし)

私が安井金比羅宮を訪れた時は、夜更けだった。
親友との2人旅。
参拝時間が決まっているスポットは、昼のうちに参拝し、24時間参拝できる安井金比羅宮は、夕食後に散歩しながら行くことにした。

知らない夜の京都を、2人で散策するだけでも楽しかった。
スマホで地図見ながら歩いていると、神社の鳥居や本堂より先に、あるものが見えた。

安井金比羅宮にある「縁切り縁結び碑(いし)」だ。
訪れた人の多くは、参拝方法に従って、碑の穴をくぐる。
悪縁を断ち切って、良縁を祈願するのだ。

昼に訪れれば、観光客でにぎわっていたことだろう。
人々の願で膨らんだ碑は、夜の闇の中で、異様な白さを纏っていた。
何とも言えない怖の感覚が襲ってきたが、却ってそれも良かった。

4.絵馬

境内には絵馬があり、碑のお札に負けないくらいの数が奉納されていた。
「ギャンブルとの縁を切りたい」
「弱い自分との縁を切りたい」
「今の夫との縁を切りたい」
など、自分自身に関わる悪縁を断ち切ろうとする祈願がほとんどだ。

その中に、米粒程度の文字で、びっしりと書いてある絵馬があった。
「○○会社の○○課に勤める△△さんにつきまとっている▢▢と△△さんの縁を切ってください。▢▢は△△さんにとって迷惑で悪でしかなく……」と、
それは絵馬中に、なぜ縁を切る必要があるかが書き連ねてあった。

△△でも▢▢でもない、祈願している人物の名前も実名で書いてあった。
しかし、縁を切った後、祈願している人物との縁を結んで欲しい、という
ありがちなオチはなかった。(書いてないだけかもしれないが)

ただただ、他人の縁を切る祈願をしているだけだった。
▢▢のことをとにかくこき下ろしている。
その具体的な内容とボリュームには圧倒される。

人の心の闇を覗いたことで、恥ずかしながら高揚してしまった私は、
「ちょっとこれ見て。」と親友にも、闇の絵馬を共有した。

親友が絵馬に夢中になっている間、他の絵馬を物色(不適切な表現で申し訳ない)していると……
「○○会社の○○課に勤める△△さんにつきまとっている▢▢と△△さんの縁を切ってください。▢▢は△△さんにとって迷惑で悪でしかなく……」

目を疑った。
全く同じ内容の絵馬だ。
見ると日付が違っているだけだった。

きっとこの絵馬を奉納した人物は、安井金比羅宮から遠くない場所に住んでおり、自分の祈願が成就するまで通い続けるのだろう。

それ以上、絵馬を物色するのは止めた。

縁切り神社が抱える闇を知るには、2枚の絵馬で十分だった。

5.瞑捜

縁切りを祈願する人々の思いで膨れ上がった碑。
心の闇で真っ黒になった絵馬。
自分自身の弱さも、欲深い心の闇も、ここですべて吐き出すことで、
人は平常を保てているのかもしれない。

安井金比羅宮は街中でひっそりと、そのすべてを深く、そしてあたたかく受け止めているように見えた。

6.おまけ

訪れた親友と
「この旅行のあと疎遠になったら、私ら悪縁だったってことだね。」と
ふざけて言っていた。

旅行から5年経つ。
親友との仲は、今も深く濃く続いている。

安井金比羅宮は、良縁に結ばれた二人が参拝すると、より深く強く結ばれる御利益があるそうだ。

また必ず訪れたい場所だ。
その時は、主人と行こう。

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