見出し画像

不器用な父と母想いな息子。二人が叶えた世界で一つの母のための結婚式。


◾️「結婚式を挙げたかった…」母の想いを叶えるために


「お母さんに結婚式をおくりたいと思っています。」


それは、あるご夫婦からの依頼でした。

たかしさんとみくさんは、
数ヶ月前に結婚したばかりの新婚のご夫婦。
ふたりはたかしさんのお母さまへ結婚式をおくりたいと連絡をくださいました。


たかしさんのご両親は十数年前に再婚。
それまではお母さまが女手一つでたかしさんを育てていました。
たかしさんはそんなお母さまにずっと感謝の想いを持っていました。

たかしさんとみくさんが結婚することになり、お母さまは様々な面で結婚式のサポートしてくださったそう。

「自分たちは結婚式をあげられなかったから、あなたたちには後悔させたくない。だからお金のことも気にしないでね。」
お母さまのサポートの裏側には、結婚式を挙げられなかったという後悔があったことを知ったたかしさん。
自分たちのためにここまで想ってくれるお母さまへ、感謝を伝えるため、そして、お母さまの夢を叶えるため、結婚式をサプライズで決行することにしました。


そして、ふたりはお父さまの元へ。
お父さまも、お母さまの気持ちを知っていたため、心残りがあったそう。
ふたりの提案に快諾し、3人で、結婚式の準備が始まりました。

サプライズを行う素敵な会場が見つかり、次はお母さまに内緒で当日の衣装決め。
お父さまにタキシードを着ていただき、その横でウェディングドレスを並べながら、当日の様子を想像してドレスを選んでいきました。

打ち合わせや試着中もあまり笑顔を見せず、口数も少なかったお父さま。
もしかするとあまり乗り気ではないのかなと私は少し心配でした。
しかしある日の打ち合わせ、いつもカバンを持たないお父さんがポケットから丸まった紙を取り出しました。

そこには、結婚式で何をやりたいか、お母さまへ、ゲストへ何を伝えたいかびっしりと手書きで書いてありました。
これには私を含め、たかしさんご夫婦もとても驚いており
お父さまの結婚式への想いが誰よりも強いことを知りました。


この打ち合わせ後、本格的にゲストへの声かけが始まりました。
お父さまにとっては結婚式の準備は慣れないし、苦手なことばかり。
しかし、大変なゲストへの声かけや、挨拶の言葉を考えることも、家でお母さんに気づかれないよう必死にしてくださっていました。

◾️結婚式が迫ったある日…ついにお母さんにバレてしまう!?


3人の想いが形になっていき、ついに2週間前となりました。
ある夜、突然みくさんから電話が。
「どうされましたか?」と聞くと、
「実は…お母さんにバレちゃったんです…」
と。


サプライズだからこそ、準備の途中でバレてしまうとことも稀にありますが、問題はその後でした。
「お父さんが酔っ払って帰ってきて、そのまま家の中でゲストに大声で電話してたらしいんです…
しかもお父さん、結婚式のメモの紙をお母さんの見えるところに置きっ放しにしていて、お母さんがそれを見つけちゃって…
ちょうどその時、お父さんとお母さん喧嘩していて、お父さんにこれはなに?って問い詰めたそうです。
でもお父さん意地でも何も言わなかったから、お母さんさらに怒ってしまって…」

その後、たかしさんとみくさんのところに連絡が来て、ふたりはお母さまへ全てを話したそうです。
しかし、お母さまはお父さまに相当怒っており、結婚式はやりたくないと言って聞かなかったとのこと。

結婚式まであと2週間。
「もし日をずらしてでも時間がもらえるならなんとかしたいのですが、ご相談できませんか?」
みくさんは日程を変更してでもなんとかお母さまを説得したいと考えていたようです。

しかし、変更のためにはお金の面でたくさんの負担が出て来てしまいますし、
きっと日を改めると、ゲスト全員が揃うことは難しいのではないかと私は感じました。
話を聞いていると、お母さまも意地になっているだけのよう。
大切な息子夫婦が用意してくれている結婚式、本当は「やりたくない」などとは思っていないのではないか。
日を伸ばさず、あと少しだけ、たかしさんとみくさんにお母さまを説得していただくよう、お願いしました。


◾️絶対に真実を言わなかった、お父さまの想い。


その後、おふたりの説得で、お母さんは結婚式に行くと言ってくださったそうです。

そして、意外な事実が判明しました。
お父さまは、お母さまに問いただされたそのあとも、何としても結婚式のことについて口を割らなかったのです。

それくらいお母さんを喜ばせたかったのでしょう。

一方で、お父さまは、お母さまがもう全てを把握していることを知りませんでした。

不器用なお父さまなりのお母さまへの愛は、お母さまも感じ取っていました。
お父さまが、自分のために慣れないサプライズを一生懸命頑張ってくれていることを知り、
当日までお父さまにはバレていないふりをする、と自らたかしさんご夫婦へ伝えたそうです。


◾️夫婦愛が生んだ、お互いへのサプライズ。


本番当日。

サプライズで行う予定だったスケジュールをそのまま決行することにしました。
サプライズをしようとしているお父さまと、それを知っていて知らないふりをするお母さま。
気づけば、お互いへのサプライズに。

サプライズを成功させようと、いつもより険しい顔でいらっしゃったお父さま。
先にタキシードに着替え、ゲストをお迎えします。


そして、後から到着したお母さまもウェディングドレスに着替えます。
ドレスを着るとわかっていたお母さまですが、ウェディングドレスへの憧れが満たされた実感からか、着替えながら何度も涙されていました。

お母さまの準備が整い、タキシードを着たお父さまを控室にお呼びしました。
お母さまへサプライズのことを伝える、お父さまにとって一番重要で大事な瞬間。
サプライズで結婚式を行うこと、今のお母さんへの想いを伝えてもらいました。

控え室の中に入ったお父さま。
鏡越しにお父さまを見つけ、ハンカチで顔を抑えるお母さま。
初めの数分、なかなか言葉が出ず、沈黙が続きました。
思わずお母さまが、

「もう、なんか言ってよ!」

と痺れを切らして言った一言で、いつもの二人の空気が戻りました。


「今日はお前のために、たかしとみくさんとみんなで結婚式を用意した。結婚式をできてなかったからサプライズで準備したんだ。」
とお父さまは振り絞るように伝えました。

どれだけの想いでお父さんが慣れないサプライズを準備をしてくれたか知っているからこそ、その言葉にお母さんの目から涙が。

そして、二人の時を越えた念願の結婚式がスタート。

◾️時を超えて叶った結婚式。お母さまの夢をたくさん詰め込んだ世界に一つだけの時間。


結婚式には、親族や、お母さまの学生時代からの友人も参列。
東北に住むお母さまの親友も、足が悪く遠出が難しい中、絶対に行きたいと駆けつけてくれました。

サプライズだとは知りながらも、大好きな人たちに囲まれて、お母さまはとても嬉しそうでした。
十数年越しに改めて夫婦の誓いを交わした挙式、ケーキカットなど、お母さまの結婚式の夢が次々と叶っていきました。

画像1


そして、最後にたかしさんからお母さまへ向けてお手紙を。
「昔から女手一つで育ててくれた母さん。仕事で心と体を壊してしまった時も母さんは一番に駆けつけてくれました。そんな母さんへ今日は感謝を伝えるために、結婚式を準備しました。いつも本当にありがとう。」
その言葉一つ一つには、たかしさんのお母さまへの想いが溢れていました。

◾️もう一つのお母さまの夢。「お母さんにウェディングドレスを見せたい」


結婚式も結びへと近づき、最後はお二人から一言ずつ挨拶をしていただきました。
するとお母さまの口から意外な言葉が出てきました。


「私は自分の母にウェディングドレスを見せられていなかったので、たかしと皆さんのおかげで、今日は母に親孝行をすることができたかなと思います。ありがとう。」

その想いはたかしさんもみくさんも初めて知るものでした。
たかしさんご夫婦が叶えた結婚式は、お母さまがずっと心に抱いていた「母にウェディングドレス姿を見せてあげたい」という想いをも叶えたのです。

そして、結婚式が終わり、無事サプライズをやり遂げたお父さま。
ほっとしたような嬉しそうな笑顔を見せていました。

母の夢を叶えるために行われた結婚式。
母に感謝する息子夫婦と不器用なお父さんが生んだ、笑いあり涙ありの、あたたかい素敵な結婚式でした。

画像2

*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*

ハモンという小さなおくりもの屋で大切な人へ想いを届けるお手伝いをしています。

おくりもの屋の日々の中で起こった、心がちょっぴり幸せになるお話を届けていきます。

✳︎おくりもの写真展HP✳︎



✳︎おくりものブックHP✳︎


✳︎おくりもの屋のハモンHP✳︎


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?